福屋隆兼

福屋隆兼：波乱の生涯

福屋隆兼は、戦国時代の石見国（現在の島根県西部）で活躍した武将です。石見国那賀郡本明城を拠点とする国人領主でした。

福屋氏の出自と隆兼の台頭

福屋氏は、益田氏の一門である御神本氏の庶流に当たります。御神本兼広が石見国那賀郡福屋に移り住み、その地名から福屋を名乗ったのが始まりです。隆兼の時代には、福屋氏は独立した国人領主として勢力を持っていましたが、周辺の有力大名である尼子氏に従属していました。

大内氏への鞍替えと勢力拡大

天文9年（1540年）、尼子詮久（後の尼子晴久）が吉田郡山城を攻めた際に尼子氏が敗北すると、隆兼は大内氏に鞍替えします。天文10年（1541年）には、石見松山城の松山氏を攻め滅ぼし、勢力を拡大しました。大内氏が陶隆房の謀反（大寧寺の変）によって実質的に滅亡すると、隆兼は毛利氏に従属することになります。

毛利氏への従属と不満の蓄積

天文24年（1555年）には、毛利氏の永安氏攻めに従軍し、戦功を挙げ、加増を受けるなど、毛利氏の下で着実に勢力を拡大していきました。永禄2年（1559年）の毛利氏による石見の国人・小笠原長雄攻めにも従軍し、長雄を降伏させる功績を挙げます。しかし、隆兼は降伏した小笠原氏に対し、福屋氏の旧領である井田・波積が与えられることに不満を募らせます。代替地が与えられるとはいえ、長年支配してきた土地を失うことへの不満は大きかったようです。

毛利氏からの離反と没落

永禄4年（1561年）7月、ついに隆兼は毛利氏を離反し、再び尼子氏に従属します。尼子義久の勧告を無視し、道僧の和解斡旋にも応じず、毛利氏と対抗したため、毛利氏との間で和平交渉上の問題となっていました。永禄5年（1562年）2月、毛利氏は道僧の在国中を狙って隆兼を攻撃します。松山城は落城し、毛利軍が本明城に迫ると、隆兼は尼子氏を頼って出雲国へ逃亡しました。

逃亡とその後

出雲に逃れたものの、尼子氏にとって福屋氏の存在は毛利氏との和平を妨げるものでしかなく、結局出雲からも退去せざるを得なくなります。その後、大和国の松永久秀に従ったとされています。尼子再興軍にも加わったとされ、尼子再興軍壊滅後も子・彦太郎らは織田軍に従軍。隆兼自身は愛宕百韻直後の明智光秀に書状を送り、支援を求めています。以降の動向は定かではありませんが、阿波国の蜂須賀家政に仕えたとも伝えられています。

子孫

隆兼の子孫は、長州藩、岩国藩、徳島藩に仕え、幕末を迎えています。

福屋隆兼は、戦国時代の激しい勢力争いの中で、自らの領地と一族の存続のために奔走した武将でした。主家を転々と変え、最終的には没落するという波乱に満ちた生涯は、戦国時代の国人領主の苦悩を象徴していると言えるでしょう。

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