石見国

石見国：山陰地方の豊かな歴史と文化を刻む令制国

石見国は、古代から近世まで日本の地方行政区分として存在した令制国の一つです。山陰道に属し、東西に細長い領土を有していました。その地理的特徴から、大田市を中心とした東部を「石東」、浜田市を中心とした中部を「石央」、益田市を中心とした西部を「石西」と呼び、地域区分されていました。また、中国山地を貫く江の川の流域であり、安芸国との交流も盛んであったと考えられています。

広大な領土と人口

明治維新直前の石見国の領域は、現在の浜田市、益田市、江津市、邑智郡、鹿足郡、および大田市の大部分（山口町山口・山口町佐津目を除く）、出雲市の一部（多伎町神原）、飯石郡の一部（飯南町塩谷・井戸谷・畑田）、広島県山県[[郡]]の一部（北広島町西八幡原の一部）に相当します。国勢調査（2010年）によると、その面積は約3,585.41平方キロメートル、人口は約21万1940人に達していました。

歴史の積み重ね：古代から近世まで

石見国の歴史は古く、古墳時代（崇神天皇朝）に大和朝廷の出雲国攻略と同時に石見国造が設置されたのが始まりとされています。その支配領域は、7世紀の律令制施行によって石見国へと引き継がれました。『延喜式』には、石見国の駅として波祢、託農、樟道、江東、江西、伊甘などが記録されており、駅は郷と同じ行政単位としての機能も果たしていたと考えられます。

近世に入ると、石見国は複数の藩の支配下に置かれました。「旧高旧領取調帳データベース」によると、明治初期には幕府領、津和野藩、浜田藩などが存在し、合計451の村から構成されていました。慶応2年（1866年）の長州戦争では、浜田藩が美作鶴田藩に移封され、領地は周防山口藩の預地となりました。明治維新後、大森県、浜田県を経て、明治9年（1876年）には島根県に編入されました。昭和28年（1953年）には、那賀郡波佐村の一部が広島県に編入されるなど、領土の変遷も複雑な歴史を物語っています。

文化遺産：国府、国分寺、国分尼寺

石見国の国府は、『和名抄』によると那賀郡に置かれていたとされています。現在では、浜田市伊甘脇遺跡付近や上府遺跡、古市遺跡などが有力候補として挙げられていますが、明確な遺構は発見されていません。また、浜田市下府町へ移転したとする説もあります。

国分寺と国分尼寺は、浜田市国分町に存在していました。現在では、曹洞宗の国分寺が国分尼寺跡と推定され、その近くの金蔵寺の境内が国分寺跡と考えられています。発掘調査では、山門、金堂、講堂、塔跡などの礎石と推定される遺構が発見されており、当時の寺院の規模や構造を知る上で貴重な資料となっています。

宗教と信仰：延喜式内社

『延喜式神名帳』には、石見国の神社として小社34座が記載されています。大社は存在せず、それぞれが地域社会の信仰の中心として重要な役割を果たしていたと考えられています。総社は伊甘神社、一宮は物部神社、二宮は多鳩神社、三宮は大祭天石門彦神社など、多くの神社が石見国の歴史と文化を伝えています。

石見国の郡と藩

石見国は、安濃郡、邇摩[[郡]]、那賀郡、邑智郡、美濃[[郡]]、鹿足郡の6郡から構成されていました。鹿足郡は美濃[[郡]]から分割されて設置された歴史を持ちます。江戸時代には、吉永藩、浜田藩、津和野藩など複数の藩が石見国を支配していました。それぞれの藩は独自の政治・経済体制を確立し、石見国の歴史と発展に大きく貢献しました。

著名な人物

石見国には、国司、守護、戦国大名、そして武家官位としての石見守を務めた多くの著名な人物が輩出しました。尼子氏、毛利氏、小笠原氏といった戦国大名も石見国の歴史において重要な役割を果たしました。また、江戸時代には、片桐石州、酒井忠予、松平乗成など、様々な藩主や武将が活躍しました。彼らの活動は、石見国の政治、経済、文化に多大な影響を与えました。

石見国の名産品

石見国は、石州瓦、石見銀、石州紙など、独特の地域資源を生かした名産品で知られています。これらの製品は、石見国の経済を支え、全国的に高い評価を得ていました。

石見国は、豊かな自然と歴史、そして文化が調和した地域でした。その歴史的遺産は、現在も地域住民の生活の中に息づき、未来へと受け継がれています。

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