福岡一家4人殺害事件

2003年 6月20日、福岡県福岡市東区で、中国人留学生3人による強盗殺人、死体遺棄事件が発生しました。この事件では、一家4人が惨殺され、遺体は博多港に遺棄されるという、非常に残忍なものでした。この事件は、その凄惨さから社会に大きな衝撃を与え、また、犯人たちが海外へ逃亡したことで、国際的な捜査協力が重要な焦点となりました。

事件の概要

犯人は、いずれも中国からの留学生で、X（当時23歳）、Y（当時21歳）、Z（当時23歳）の3人です。彼らは生活費に困窮し、金銭目的で犯行に及びました。事件前には、日本語学校や友人宅などから窃盗を繰り返しており、その過程で「犯行発覚を防ぐため被害者を殺害しよう」という考えに至ったとされています。

2003年6月中旬、Xは、アルバイト先へ向かう途中で見かけたAさん宅に高級車が駐車されていることから、Aさん宅への強盗を計画しました。そして、散打の経験があるZを犯行に引き込み、3人で一家皆殺しを事前に決めていました。これは、口封じだけでなく、仮に金銭が得られなかった場合でも、事件を強盗ではなく殺人が目的だったと印象付ける意図があったとされています。

犯行前には、遺体を山に埋める計画も立てていましたが、困難を理由に断念し、海に沈める計画に変更しました。事前に、手錠や鉄亜鈴などの道具を準備し、遺棄場所の下見も行っていました。

事件発生

2003年 6月20日未明、3人はAさん宅に侵入。まず、入浴中の妻Bさんを殺害し、その後、2階で寝ていた長男Cさんを絞殺しました。さらに、長女Dさんを人質に取り、帰宅したAさんを脅迫しました。Aさんは娘を助けようと懇願しましたが、犯人たちは聞き入れず、最終的に長女Dさんも殺害しました。Aさん自身も、暴行を受けた後、海に遺棄され殺害されました。この一連の犯行で、犯人たちが奪ったのは現金約37,000円とキャッシュカード、預金通帳のみでした。

遺体は、博多港で発見されました。遺体には錘がつけられ、手錠がかけられていたことから、警察は強盗殺人と断定し捜査を開始しました。事件後、XとYは中国へ逃亡しましたが、Zは日本に残り、後に逮捕されました。

逮捕と裁判

日本での裁判（Z被告）

Z被告は、2004年1月に強盗殺人などの容疑で逮捕・起訴されました。第一審では死刑判決が言い渡されましたが、Z被告は控訴しました。控訴審でも死刑判決が支持され、Z被告は上告しました。しかし、最高裁は2011年10月20日に上告を棄却し、Z被告の死刑が確定しました。Z被告は再審請求中でしたが、2019年12月26日に死刑が執行されました。

中国での裁判（X・Y被告）

中国に逃亡したXとYは、中国公安当局によって逮捕されました。2005年1月、遼寧省遼陽市の中級人民法院は、Xに死刑、Yに無期懲役の判決を言い渡しました。Xは控訴しましたが、棄却され、2005年7月12日に死刑が執行されました。

この事件では、日中間の捜査共助が重要な役割を果たしました。特に、中国で作成された供述調書が日本の裁判で証拠採用されたことは、国際捜査の先例として評価される一方で、黙秘権がない中国の調書を問題視する意見もあり、議論を呼びました。

週刊誌報道と名誉毀損訴訟

事件発生当初、一部週刊誌で被害者家族や親族に関する中傷報道がなされました。これに対し、名誉を毀損されたとして、複数の親族が週刊誌を相手に民事訴訟を起こしました。裁判所は、週刊誌の報道が不十分な取材に基づいたものであり、名誉毀損に当たるとして、週刊誌側に損害賠償を命じる判決を下しました。これらの訴訟は、メディアの報道倫理について、改めて問題を提起しました。

事件の背景

この事件は、留学生の経済的困窮が背景にある一方で、犯行の残虐性から、計画的な犯行であったことが窺えます。また、犯人たちが犯行後に逃亡したことで、国際的な捜査協力の重要性も浮き彫りになりました。

この事件は、多くの人々に深い悲しみと衝撃を与えました。そして、犯罪の残酷さ、報道のあり方、国際捜査の協力など、様々な問題を提起した事件として、今後も語り継がれるでしょう。

参考文献

刑事裁判の判決文
福岡地方裁判所刑事第三部判決 2005年（平成17年）5月19日
福岡[[高等裁判所]]第二刑事部判決 2007年（平成19年）3月8日
最高裁判所第一小法廷判決 2011年（平成23年）10月20日

* 西日本新聞「東区一家4人殺害事件」

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