福岡大学ワンダーフォーゲル部ヒグマ事件

福岡大学ワンダーフォーゲル部ヒグマ事件

福岡大学ワンダーフォーゲル部ヒグマ事件は、1970年7月に北海道の日高山脈のカムイエクウチカウシ山で発生した悲劇的な遭難事件です。この事件には、福岡大学ワンダーフォーゲル同好会に所属する男子学生5人が関与しました。当時、彼らは登山を計画し、道中でヒグマに襲われるという恐ろしい経験をしました。

事件の経緯

計画と出発

1970年7月12日の朝、福岡大学の男子学生A（20歳、リーダー）、B（22歳、サブリーダー、生還者）、C（19歳）、D（19歳、生還者）、E（18歳）の5人は、福岡市の博多駅から出発しました。彼らは14日に新得駅に到着し、登山の準備を整えました。

ヒグマとの遭遇

7月25日、彼らは日高山脈にある九ノ沢カールでテントを張りました。しかし、その夜、ヒグマが出現し、彼らの荷物を漁り始めました。学生たちは音を立てて追い払い、荷物は取り戻したものの、ヒグマは夜間にも再び襲撃してきました。それに加え、26日の早朝にはテントを倒すという危険な行動に出ました。

この一連の出来事により、リーダーAは、BとEに下山して救助を呼ぶよう指示しました。途中で他の登山者たちと遭遇した彼らは、救助要請を伝えましたが、再び山に戻ったのです。

ヒグマによる襲撃

その日の午後、ヒグマが再び出現し、メンバーは先の避難所である鳥取大学のテントへ向かおうとしました。しかし、すでに避難された後だったため、逃げ場を失った彼らは夜道を行くこととなりました。ヒグマは彼らを追い、最初にEを襲い、その後の混乱の中でCとはぐれてしまいました。Cは一人で逃げることとなり、飢えと恐怖に苛まれながらも夜を明かしました。

27日早朝、残った4人は再びヒグマとの遭遇を果たし、Aが命を奪われました。BとDはなんとか下山し、工事現場で車を借りて保護されたのですが、Cは単独での行動中に再度ヒグマに襲われて命を落としました。

救助活動とその後

28日、帯広警察署を中心に、十勝山岳連盟などからなる救助隊が編成され、行方不明者の捜索が始まりました。29日には2名の遺体が発見された後、最終的にCの遺体も見つかりました。遺体は非常に悲惨な状態でした。

ヒグマはその後、射殺され、その体内から人間の肉片は発見されませんでしたが、事件に対する議論は続いています。動物学者の木村盛武は、遭遇時の対処の誤りを指摘し、この事件から学ぶべきことが多いと述べています。

事件を題材にした作品

この事件は多くのメディアによって取り上げられ、数々のテレビ番組で放送されています。内容は、当時の学生たちの遭遇や、その心理状態、事件の背景に迫るものです。特に近年、記録映像や当時のメモが注目され、事件の詳細が明らかにされています。

この事件の背後には、単なる遭難にとどまらず、ヒグマという野生動物が持つ危険性、そしてそれに対する無知や未熟さが大きく影を落としています。登山を行う際には、自然に対する敬意と知識が不可欠であり、この教訓は今もなお多くの人々に伝えられています。

結論

福岡大学ワンダーフォーゲル部ヒグマ事件は、山での貴重な経験と同時に、野生動物との遭遇が如何に危険であるかを深く考えさせる事件として歴史に刻まれています。命を落とした学生たちへの哀悼の意を表し、同様の悲劇が二度と起こらないことを願っています。

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