福岡県立高等学校 (旧制)

旧制福岡県立高等学校：戦後復興期の特異な存在

1947年、福岡県戸畑市（現・北九州市八幡東区）に設立された旧制福岡県立高等学校は、その短い歴史の中に、戦後日本の教育制度の変遷を象徴する出来事が凝縮されています。この学校は、旧制福岡県立医学歯学専門学校の医学科が連合国軍最高司令官総司令部（GHQ）による審査で大学昇格を認められず廃止されたことを受け、在校生の救済措置として設置された「戦後特設高等学校」でした。

設立の背景：医学科廃止と学生の進路

旧制福岡県立医学歯学専門学校は、1914年に設立された私立九州歯科医学校を起源とし、その後県立に移管、戦時下の1944年に医学科を併設して改称されました。しかし、戦後、設備不足などが原因でGHQの審査でB級判定を受け、医学科は廃止。歯学科のみが存続することとなり、福岡県立歯科医学専門学校と改称されました。

この医学科廃止によって行き場を失った学生を救済するため、旧医学科の学生を収容する高等科（理科のみ）を設置した学校が、福岡県立高等学校です。修業年限は3年で、1947年5月に設置が認可され、同年8月に第1回入学式が行われました。

例外的存続と廃校

多くの旧制高等学校は、1947年度入学生までを卒業させ、1948年度生は1年次修了後に新制大学へ進学させるという対応を取っていました。しかし、福岡県立高等学校は、1948年度生が卒業する1951年まで存続しました。これは、旧制高等学校の廃止に伴う措置としては非常に例外的で、同様の対応を取った学校は旧制山梨県立高等学校のみと言われています。この例外的な存続期間は、在校生への配慮と、戦後復興期における教育制度の混乱を反映していると言えるでしょう。1951年3月31日、福岡県立高等学校は廃校となりました。

福岡県立歯科医学専門学校と九州歯科大学

一方、福岡県立歯科医学専門学校は、新制大学への移行を経て、1949年4月1日に九州歯科大学として新たな歴史を歩み始めます。現在も続く九州歯科大学は、福岡県立高等学校の前身校である旧制福岡県立医学歯学専門学校の流れを汲む重要な教育機関と言えるでしょう。

学校跡地とその後

福岡県立高等学校の敷地は、現在、福岡県立北九州視覚特別支援学校となっています。その地には、かつて多くの学生たちが未来への希望を胸に学んだ歴史が息づいています。

まとめ：戦後復興期の教育制度を映す鏡

旧制福岡県立高等学校は、わずか4年間という短い歴史しか持ちませんでしたが、戦後日本の混乱期における教育制度の変遷、そして在校生への救済という重要な役割を果たした学校でした。その存在は、戦後復興期の困難と、教育の重要性を改めて考えさせる貴重な歴史的遺産と言えるでしょう。卒業生たちは、多くが新制大学の歯学部や医学部に進学し、それぞれの分野で活躍したと考えられます。その功績は、現在の医療や教育界にも深く影響を与えているはずです。この学校の歴史を振り返ることで、私たちは戦後の日本の歩みと、教育の未来について、より深く理解することができるでしょう。

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