福岡空港ガルーダ航空機離陸事故

福岡空港ガルーダ航空機離陸事故

福岡空港ガルーダ航空機離陸事故は、1996年6月13日に福岡空港で発生した航空事故です。この事故は、2023年12月時点で日本国内での定期航空便による最後の旅客死亡事故となっています。

事故の概要

事故の発生は、ガルーダ・インドネシア航空の865便（DC-10-30型機、機体記号PK-GIE）が福岡空港からインドネシアの首都ジャカルタへ向けて離陸する際に起こりました。午後0時8分、滑走路16を離陸しようとした際、右翼第3エンジンが故障し、機長は離陸中止を決定しました。しかし、機体は既に数フィート浮上しており、滑走路を止まりきれずにオーバーラン、滑走路端の緑地帯に擱座してしまいました。

擱座時の衝撃で右翼のランディングギアが燃料タンクを突き破り、炎上が始まりました。この事故によって、乗員15名と乗客260名の合計275名のうち、3名が死亡し、2名が重傷、さらに16名が軽傷を負いました。また、消火活動中の消防士53名も、漏れたジェット燃料に接触し化学熱傷を負う事態となりました。

この事故の際、事故機は滑走路をオーバーランした後、福岡県道45号を横切る形になりましたが、幸いにも通行していた車両はありませんでした。しかし、初期報道では「県道を走行中の車両が巻き込まれた」との誤報も流れました。死亡した3名は、右側窓の座席に着席しており、特に34Kおよび35Kの2名は即死し、35Jの乗客は意識を失い焼死したと考えられています。脱出にあたっては、乗客に対する客室乗務員の誘導が不十分だったとの指摘も多く寄せられています。

事故の原因

事故の原因は、第3エンジンの故障でした。具体的には、エンジン内部にある高圧第1タービンブレードが粒状酸化疲労により破断し、このためエンジンの出力が失われてしまいました。製造元のGEは、これに関連して全世界で同様の問題が21件報告されており、酸化を防ぐための改良品の使用を推奨していました。さらに、ガルーダ航空はエンジンの保守をKLMオランダ航空に委託していましたが、故障したブレードは6000サイクルの推奨廃棄サイクルを超えて6182サイクルに達していました。KLM航空ではサイクル超過を許容していたものの、関連情報がきちんと伝わっていなかったことが問題とされました。

日本の運輸省航空・鉄道事故調査委員会は、1997年に発表した報告書で、離陸を中止した機長の判断が適切ではなかったと指摘しました。機長は「衝突の危険があったため、離陸を中止せざるを得なかった」と述べていますが、実際にはV1（離陸決心速度）を超えており、飛行を続行するべきであったとされています。このように、V1を超えた後の離陸中断は非常に危険であり、むしろ飛行を続行する方が安全であるとされています。

航空安全の碑

福岡空港の南側には、「航空安全の碑」が建立されており、事故の犠牲者や関係者を追悼しています。航空事故調査においても、類似の事件が多く報告されていることから、事故原因や安全対策についての教訓を引き出す重要性が改めて認識されています。

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