福沢諭吉の真実

書籍『福沢諭吉の真実』について

『福沢諭吉の真実』は、2004年に文藝春秋から出版された平山洋による著作です。この本は、福沢諭吉の思想とその批判に対する反論を通じて、福沢の実像を明らかにすることを目的としています。著者は、福沢に対する理解が誤解に基づいている部分があると考え、これまでの研究が依拠していた資料を再評価しています。

書籍の背景と成立

この書籍の成立には、2001年に始まった「安川・平山論争」が重要な役割を果たしています。名古屋大学名誉教授の安川寿之輔が、朝日新聞にて福沢の思想をアジア蔑視に基づくものとして批判し、それに対して平山が反論を展開しました。そこから始まった意見交換が、平山の研究を深める契機となり、最終的に本書が完成しました。

平山は、福沢の思想が弟子の石河幹明によって歪められたと述べています。特に、福沢自身が執筆しなかった無署名論説が福沢の名のもとに編纂されたことが、誤った福沢像を作り上げる原因にあると指摘しています。著者は、原型を元にページ数を削減し、2004年に本書を発刊しました。

内容の概要

本書は、福沢諭吉の思想に関する根本的な再考を促します。第一章では、福沢が創刊した『時事新報』の歴史や論説の執筆者について記述され、その中で石河の存在が強調されています。また、第二章では過去の福沢全集の編纂作業について詳細に説明し、どのように福沢の資料が集められ、思惑のもとに整理されていったのかを明らかにしています。

第三章では、実際に福沢の執筆した論説の検証がなされ、福沢の真筆とされる作品に対しての詳細な分析が行われています。また、第四章の「福澤ルネッサンス」についての考察では、石河が描いた福沢像がいかに当時の政治情勢に流されて形成されたものかが論じられています。

最後に、第5章では「脱亜論」の歴史的な評価について触れ、さまざまな解釈がなされてきたその意義を考察します。平山は、福沢のアジアに対する見解を前述の文脈において新たに捉え直す必要があると主張します。

まとめ

『福沢諭吉の真実』は、福沢諭吉の思想を巡る偏見や誤解を正す試みが詰まった一冊です。著者は、福沢の真の姿を理解するためには、彼の言葉がどのように伝わり、受け止められてきたのかを慎重に再考することが重要であると強調しています。この本は、福沢に関する研究やその影響を深く考察する上で価値のある資料となるでしょう。

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