福王流

福王流の歴史と特徴

福王流は、能楽の中で重要な役割を果たすワキ方の一流派であり、江戸時代から続く伝統を持っています。この流派は、特に観世流の座の付け役として活動しており、現在でもその芸系は観世流に近いと言われています。現在の宗家は十六世福王茂十郎が担っています。

初代の功績

福王流の歴史は、初世福王但馬守盛忠(1521年～1606年)から始まります。彼は播磨国三木の神官であり、観世流の脇を担当していた観世元頼に師事しました。盛忠はその才能を認められ、織田信長に召し出されて観世座付きのワキ方としての地位を確立しました。この時期、ワキの役はシテ方から独立した職掌となり、盛忠の活動はその流れに大きく関連しています。

次に二世福王盛義が出現し、彼は謡曲の作者としても知られています。盛義の時代を通じて、福王家は観世座の中での重要な地位を維持しました。

家系の変遷

時代が進むにつれ、四世福王盛厚の代で後嗣が途絶え、福王流は一時中断しました。これを惜しんだ観世流の黒雪が、弟子である服部栖元の子を五世福王盛親として福王流を再興させました。盛親は京都に移り住み、素謡教授に専念するようになり、福王流は京都において大きな勢力を持つようになりました。

しかし、六世福王盛信はその人柄に問題があり、多くの門弟を破門しました。これにより京都の有力な弟子たちが一斉に観世流に転向するという事件も発生しました。

八世福王盛有は文筆と謡曲の新作に優れ、子の九世盛勝もまた父の文人の影響を受け、独自の名前を持つほどになりました。

近代の変遷

明治維新後、福王流はさらに厳しい時代を迎えます。1898年には十四世福王繁十郎盛哲が亡くなり、宗家は一時中絶します。しかし、その後、野島信や中村弥三郎、江崎金次郎といった弟子たちがこの流派の芸系を維持しました。

1938年には中村弥三郎の子供が十五世福王茂十郎として宗家を再興し、現在はその子供が十六世福王茂十郎を名乗っています。

現在の福王流

2023年時点で、能楽協会に登録されている福王流の役者は二十名程度で、ほとんどが関西に在住しています。東京にはわずかに数名が存在するほどで、関西を拠点として活動しています。長い間観世座付であったため、その演技スタイルやセリフ回しは観世流に非常に近いものとなっており、この点では宝生流とは明らかに異なる芸風を保っています。

福王流の特徴は、長い歴史の中で培われた様々な伝承と技術に基づき、現代でも多くのファンに支持され続けているということにあります。

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