禧嬪張氏

禧嬪 張氏の生涯と影響

禧嬪 張氏（きひん ちょうし、ヒビン チャンシ）は、李氏朝鮮の第20代国王景宗の母であり、第19代国王粛宗の側室でもあります。彼女の実名は玉貞（オクチョン）で、仁同張氏に本貫を持つ中人出身の王妃です。その生涯は波乱万丈であり、政治的な権力争いの中で大きな影響を及ぼしました。

入宮と出世

張氏は、第16代国王仁祖の継妃である荘烈大王大妃の宮中の女官として知られる針房内人（チムバンナイン）として宮中に入りました。家計が苦しい中、幼くして父を失い、女官として働く道を選びました。その後、粛宗からの寵愛を受けますが、1680年から1681年にかけては宮廷から追放されることとなります。その理由は、粛宗の母である明聖王后によるものです。

当時、朝鮮の宮廷では西人派と南人派の間で派閥争いが繰り広げられていました。西人派は仁顕王后閔氏を支持し、政権を握っていましたが、仁顕王后は子供に恵まれない状況にありました。この機を捉えた南人派は、康熙25年（1686年）に張氏を再び後宮に迎え入れ、承恩尚宮に任命しました。

張氏は、1686年12月に淑媛として昇進し、その後1688年には昭儀に昇進し、王子李昀（後の景宗）を出産します。その功績により、康熙28年（1689年）には「嬪」に昇格し「禧嬪」と呼ばれるようになりました。李昀は王世子に任命され、張氏は王妃にも冊立されましたが、これにより南人派が権力を握ることになりました。

権力の変動と悲劇

一方で、西人派は仁顕王后の復位を目指す動きを強めました。このことに危機感を抱いた粛宗は、仁顕王后を復位させることで南人派を牽制しようとしました。康熙33年（1694年）には、張氏は王妃から嬪に降格され、仁顕王后が復位しました。

その後、康熙40年（1701年）に仁顕王后が死亡すると、西人派は張氏を責め立て、最終的に粛宗から処刑されたのです。享年42。彼女の死は、権力争いの犠牲となった悲劇的なものでした。

評価と影響

張氏は、しばしば「朝鮮三大悪女」や「朝鮮三大妖女」として語られることがあります。彼女を評価する史実は、主に粛宗時代の朝鮮実録をもとにしていますが、これらが英祖の時代に編集されたことから、彼女に不利な内容が加えられている可能性があります。そのため、本当に悪役であったのかを見極めることは難しいです。しかし、彼女の波瀾万丈な生涯は、今日でも文学や映画、テレビドラマにおいてテーマとされ、多くの人々の関心を引き続けています。

家族

張氏は二人の息子を持ちましたが、長男は子を残さず、次男は若くして亡くなったため、彼女の血を引く子孫はいません。彼女の父は張炯、母は坡山府夫人であり、兄の張希載は斬首刑に処されました。

作品における張氏

彼女の生涯や人物像は多くの作品で取り上げられています。1961年の映画「張禧嬪」や、2013年のドラマ「チャン・オクチョン-張禧嬪-」などが代表的で、さまざまな解釈でその生涯が描かれています。

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