秀子の車掌さん

映画『秀子の車掌さん』の魅力

『秀子の車掌さん』は、1941年に南旺映画製作によって公開された日本映画である。原作は井伏鱒二による短編小説『おこまさん』で、脚色と演出は成瀬巳喜男が手掛けた。主演には当時少女スターとして名を馳せていた高峰秀子が選ばれ、彼女の名がタイトルにも冠されるなど、アイドル映画的な要素が強い作品となっている。この映画は、成瀬と高峰の初の共演作であり、以後彼らは多くの名作を生み出し、「名コンビ」と称される存在となった。

作品の背景

本作は、前年度に公開された『秀子の應援團長』に続く高峰秀子主演作で、彼女の人気を活かしつつ成瀬巳喜男の脚色によるシナリオが特徴である。映画は、主に甲府を中心にロケーションが行われ、叙情的な車窓の風景とともに、物語の背景が展開される。結末には皮肉が効いており、軽快なものから一層深い感慨を呼ぶような内容に仕上げられている。

成瀬の作品群には、当時の社会情勢や風俗が色濃く反映されていることがよくある。しかし『秀子の車掌さん』においては、開戦前の慌ただしい時代とは対照的に、童話のような非現実的な雰囲気が漂っている。昭和16年の日本は、戦争の兆しがあったが、この映画はその騒がしさから距離を置いた作品である。成瀬はその後、主に戦時中や終戦直後にスランプとされる時期に突入していくが、本作はその直前の安定した評価を受ける傑作として位置づけられている。

あらすじ

物語は、甲府のバス会社に勤務するガイドのおこまさんを中心に展開する。おこまさんは、客足が伸び悩む状況を打破すべく奮闘する。彼女は小説家の井川に、地元の名所や旧跡を巡る短文を書いてもらい、その内容を活かして乗客を呼び寄せようと試みる。おこまさんの熱意と努力が描かれる一方で、その行動がどのような結果を生むのか、視聴者も興味を持つようにストーリーは進行していく。

キャストとスタッフ

主なキャストには、高峰秀子が主人公のおこまさんを演じ、藤原鶏太が園田役、夏川大二郎が井川役、馬野都留子が母役などで出演している。この映画のスタッフには、成瀬巳喜男が脚色と演出を担当し、撮影は東健が行った。他にも、美術や音楽など各分野で才能が光るスタッフが揃い、作品全体を盛り上げている。

エピソードとして、共演の藤原鶏太は藤原釜足の別名であり、内務省からのクレームを受けて改名を余儀なくされたという興味深い背景がある。彼の名前は「鶏太」と「変えた」を転訛したもので、当時の時代を反映したエピソードとしてよく知られている。

まとめ

『秀子の車掌さん』は、成瀬巳喜男と高峰秀子の初共演による作品であり、時代背景やその後の評価を考慮することで、より深い理解が得られる作品である。叙情豊かな映像とともに、観る者に感動を与えるこの映画は、今もなお色褪せることなく愛されている。

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