私人訴追主義

私人訴追主義について

私人訴追主義（しじんそついしゅぎ）は、刑事事件に関し、公訴ではなく私人による訴追を認める法律制度です。この考え方は、国家訴追主義と対照的であり、後者は一般的に国が犯罪の起訴権を持つ体系です。私人訴追主義は主にイギリスの法制度において採用されており、他の多くの国、特に日本、アメリカ合衆国、フランス、ドイツなどは国家訴追主義を採用しています。特に日本では、犯罪の起訴および不起訴に関する権限が検察官に一貫して集中しています。

イギリスにおける私人訴追主義

イギリスでは、警察官や検察官でない個人が発見した事件を刑事裁判所に提出することができます。これは国家訴追主義の国々とは大きく異なる点です。たとえば、日本では検察官だけが起訴する権限を持ち、私人が犯罪に関して訴追することは許可されていません。

近年の動向

イングランド及びウェールズにおける私人訴追主義は、これまでの伝統を有していますが、実際には私人による訴追は行われることは少なく、主に警察が訴追の役割を果たしています。1985年に導入された「犯罪訴追法」によって、検察庁（Crown Prosecution Service；CPS）が設立され、従来の警察にあった訴追機能は分離されました。この新しい制度のもとでは、検察庁には公訴局長（Director of Public Prosecutions；DPP）が設置され、訴追は主に警察から移行されました。ただし、CPSは国家の訴追機関ではなく、その法律家たちの権限は、基本的に警察によって行われた訴追の審査と手続きに限定されていました。

その後、2003年の刑事司法法の施行によって、CPSの権限が大幅に拡大されました。この法律により、「公訴官」が新たに設けられ、検事（Crown Prosecutor；CP）が多くの事件を積極的に訴追できるようになりました。また、警察が訴追する場合もDPPが提供するガイドラインに従うことが求められるようになり、その結果、イングランド及びウェールズの訴追制度は、国家訴追主義を採用している他国との接近が進みました。

結論

このように、イギリスにおける私人訴追主義は、伝統的には私人による訴追が認められる法制度でしたが、実際には警察と検察に多くの権限が集中しています。そして近年、様々な法改正を経て、国家訴追主義に向けた動きが強まっていることが見受けられます。この制度の変化は、法的な枠組みとしての国家と個人の関係や、法の適用のされ方に対する考え方の変化を反映しているとも言えるでしょう。そのため、今後の動向にも注目が必要なテーマです。

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