公訴

公訴について

公訴（こうそ）とは、国家が公の立場で行う刑事訴訟の手続きのことであり、私人が行う私訴とは異なる概念です。日本では刑事事件に関して国家機関が訴追の役割を担う「国家訴追主義」が採用されています。これに対し、イギリスをはじめとするいくつかの国では、私人が訴追を行う私訴が原則となっており、公訴は例外的な手続きとされています。

公訴に関する原則

公訴には以下のような重要な原則が存在しますが、これらは国によって異なることがあります。特に日本では、以下の諸原則が採用されています。

国家訴追主義

国家訴追主義では、刑事事件における公訴の提起および遂行は主に検察官の権限に限定されています。日本においては、私人による起訴は法律上認められていません（刑事訴訟法第247条）。

起訴独占主義

起訴独占主義は、国家機関のうち検察官のみが起訴する権限を持つことを示します。この点も日本の法律で明確に規定されています（刑事訴訟法247条、検察庁法4条）。ただし、特定の状況においては付審判制度や検察審査会による起訴議決制度などの例外があります。

起訴便宜主義

起訴便宜主義は、検察官が犯罪の内容や情況を考慮して起訴を行わない選択をすることを許可する制度です。これは犯罪に対する社会的背景や被告人の状況を反映するもので、1922年から日本でも実施されています（刑事訴訟法第248条）。

公訴不可分・不告不理の原則

この原則によれば、公訴の効力は特定の被告人にのみ及び、指定された公訴事実に関連する範囲内でのみ適用されます（刑事訴訟法第249条）。そのため、検察官が公訴を提起しない事件については、裁判所が判断を下すことはできません。

各国の公訴手続

大陸法系国における公訴手続

フランスやドイツなどの大陸法系国では、基本的に検察官が公訴を提起する役割を担っていますが、一部で被害者が私人訴追を行うことが認められています。このため、一般的には国家訴追主義が根本にあると理解されます。

英米法系国における公訴手続

一方、イギリスでは公共の立場からの訴追（公訴）は例外的なものであり、主に私人による訴追が行われます。また、アメリカでは私人訴追が廃止され、代わりに連邦および州の検察官制度が設けられていますが、州によっては大陪審が別個に存在します。

日本の刑事手続における公訴

日本の公訴の制度は、検察官が独自の判断で公訴を提起することを基本としています。そのプロセスには、起訴状の提出が必要であり、起訴状には被告人の氏名や具体的な公訴事実が詳細に記載されます（刑事訴訟法第256条）。また、起訴状のみに基づいて公訴が行われる「起訴状一本主義」が存在し、証拠や他の書類の添付は許可されていません。

さらに、検察官は第一審判決前に公訴の取り消しが可能であり、この柔軟性が日本の公訴の特徴です（刑事訴訟法第257条）。

結論

公訴は国家の法的権限に基づく重要な手続きであり、国によってその手法や原則は異なります。日本においては、国家訴追主義と起訴独占主義のもと、検察官が中心的な役割を果たしており、法の下での公平性を確保するための重要な制度として機能しています。

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