私掠免許

私掠免許とは

私掠免許（しりゃくめんきょ、英: Letter of Marque）とは、かつての帆船の時代に存在した制度で、国家が民間の船舶に対し、敵対する国の船舶を攻撃し、拿捕することを許可する公的な許可状のことです。これは一種の勅許特許状であり、私掠免許を得た船舶は「私掠船」と呼ばれました。

私掠免許の種類

私掠免許には、主に以下の2種類が存在しました。

私掠免許状 (Letter of Marque): 戦時中にのみ発行されるもので、敵国の船舶を攻撃・拿捕する許可を与える。
復仇免許状 (Letter of Reprisal): 平時でも発行されることがあり、自国民が受けた損害の賠償を、敵国から拿捕した財産によって行うことを許可する。

どちらの免許状を所持している場合でも、私掠船は発行国の責任の下、公海上で特定の船舶を拿捕することが合法的に認められていました。つまり、国家によって公認された海賊行為という側面があったのです。

私掠免許の取得と経済活動

私掠免許は、政府に許可料を支払うことで取得できました。船主は自らの費用で戦争に参加する代わりに、拿捕した敵の財産を報酬として得ることができました。この報酬は、被った損害と同等の額までのものが復仇免許状、無制限のものが私掠免許と呼ばれました。

復仇は、相手国への損害賠償請求を個別の自力救済として行うことを許可したものであり、私掠は、戦時下において個人に許可された合法的な戦闘行為でした。これは、違法な海賊行為とは異なり、国家公認の経済活動として認識されていました。敵船から没収した財産であっても、課税の対象となっていたことからも、その法的地位がうかがえます。

歴史

私掠免許を最初期に発行したのはイングランドであると言われています。その起源は、海賊を捕える私兵に対する拿捕許可状に遡るとされます。その後、私掠免許は戦争の際に何度か発行されました。有名な例としては、イングランドのエリザベス1世がキャプテン・ドレークに発行した免許が挙げられます。

しかし、1792年のフランス憲法制定会議や1856年のパリ条約（パリ宣言）を経て、免許状を発行する国は徐々に減少していきました。そして、1909年にアメリカ合衆国が発行を停止したことで、私掠免許は事実上廃止されることとなりました。

私掠免許と海賊の違い

私掠免許を得た私掠船は、一見すると海賊と区別がつきにくい存在です。しかし、両者の間には明確な違いがありました。

国家の許可: 私掠船は、国家から正式な許可を得て活動していました。一方、海賊は国家の許可なく、私欲のために略奪行為を行っていました。
対象: 私掠船は、敵対する国の船舶のみを攻撃対象としていました。一方、海賊は自国の船舶を含め、あらゆる船舶を攻撃対象としていました。
* 責任: 私掠船の行為は、発行国の責任の下にありました。一方、海賊の行為は、いかなる国家の責任も負いません。

このように、私掠船は国家によって管理された合法的な存在であり、海賊とは根本的に異なるものでした。

まとめ

私掠免許は、国家が民間船を活用して敵国の経済力を弱体化させるための制度でした。しかし、国際法の発展とともに、その必要性は薄れ、最終的には廃止されることとなりました。私掠免許の歴史は、国家間の紛争における法の役割や、国家と個人の関係について深く考えさせられるものでしょう。

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