私的独占

私的独占とは

私的独占とは、一事業者が、その経済力を背景に市場を支配し、他の事業者の事業活動を妨げる行為を指します。これは、公正な競争を阻害し、市場の健全な発展を妨げるため、独占禁止法によって厳しく規制されています。

私的独占の定義

独占禁止法において、私的独占とは、「事業者が、単独で、または他の事業者と共謀して、他の事業者の事業活動を排除または支配することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限すること」と定義されています。

重要なのは、単に市場で優位な地位を占めているだけでなく、その地位を利用して競争を阻害する行為を行っていることです。

私的独占を構成する要素

私的独占は、以下の3つの要素から構成されます。

1. 市場支配的行為：市場での優位な地位を濫用し、他の事業者の活動を妨げる行為。具体的には、排除行為と支配行為があります。
2. 一定の取引分野：競争が制限される市場の範囲。地理的市場と商品市場の両面から画定されます。
3. 競争の実質的制限：市場における競争が著しく制限される状態。市場支配力の形成・維持・強化がこれに該当します。

市場支配的行為

市場支配的行為は、さらに「排除行為」と「支配行為」に分類できます。

排除行為

排除行為とは、他の事業者の事業活動を困難にする行為です。主なものとして以下が挙げられます。

不当廉売：正当な理由なく、著しく低い価格で商品やサービスを提供すること。
地域的差別対価：特定の地域のみで価格を引き下げ、新規参入事業者を排除しようとする行為。
排他条件付取引：特定の取引先とのみ取引を行うよう強制する行為。

これらの排除行為は、それ自体が不公正な取引方法に該当するケースが多く、競争を阻害する行為として厳しく規制されています。濫用的な商標出願も排除行為とみなされることがあります。

支配行為

支配行為とは、他の事業者の自由な意思決定を困難にする行為です。具体的には、以下のものがあります。

株式取得：他の事業者の株式を取得し、その意思決定を左右する行為。
役員兼任：自社の役員が、他の事業者の役員を兼任することで、事業活動を支配する行為。
優越的地位の濫用：取引上の優位な地位を利用して、他の事業者に不利な条件を押し付ける行為。

支配行為は、必ずしも相手方の意思に反している必要はなく、事実上意思決定を左右できる立場を獲得することで成立します。

対市場効果

私的独占が成立するためには、単に市場支配的行為が存在するだけでなく、「一定の取引分野における競争を実質的に制限すること」が必要です。

一定の取引分野

まず、どの範囲で競争が制限されているかを特定するために、市場の範囲を確定する必要があります。これは、地理的市場（地域的な範囲）と商品市場（製品・サービスの範囲）の両側面から検討されます。

競争の実質的制限

「競争の実質的制限」とは、市場における競争が著しく制限された状態を指します。具体的には、市場支配力が形成・維持・強化される状況を意味します。市場支配力とは、特定の事業者が、価格、品質、数量などの条件を自由に左右できる状態を指します。

審決例や裁判例では、排除行為や支配行為によって市場シェアが上昇した場合に、「競争の実質的制限」があったと認定されることが多いですが、具体的な数値基準があるわけではありません。

関連法規

私的独占は、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律（独占禁止法）によって規制されています。独占禁止法は、公正な競争を促進し、消費者の利益を保護することを目的としています。

関連項目

私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律
日本音楽著作権協会

私的独占は、市場の健全な発展を阻害する行為であり、社会全体にとって大きな不利益をもたらします。そのため、独占禁止法によって厳しく規制され、公正な競争が確保されるよう努められています。

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