秋山木工

秋山木工株式会社

秋山木工株式会社は、神奈川県横浜市都筑区に本社を構える特注家具の製造業者です。その製品は迎賓館や国会議事堂、宮内庁といった日本の重要な公共施設でも採用されるなど、極めて高い品質と技術力を有することで知られています。また、同社は「現代の丁稚制度」と称される、他に類を見ないほど厳格な社員研修制度を導入していることでも広く注目を集めています。

沿革

秋山木工の歴史は1971年に始まりました。株式会社三越製作所に勤務していた3名の職人が独立し、川崎市宮前区鷺沼で有限会社秋山木工として設立されました。その後、事業の拡大とともに職人の独立を支援し、1977年には秋山木工グループとして複数の関連会社を設立。同年、新入社員向けの研修制度を設け、次世代の家具職人の育成に着手しました。1980年代にかけてグループ企業を増やし、1998年には横浜市荏田東町に本社機能と複数の工場を集約し、生産体制を強化しました。2005年にはグループ企業の一つである株式会社秋山商事の名称を株式会社木風心風堂に変更し、さらに2010年には一般社団法人秋山学校を設立するなど、多岐にわたる事業展開を進めてきました。

独自の社員研修制度

秋山木工の最も特徴的な点は、その独自の社員研修制度です。これはしばしば「徒弟制度」や「丁稚制度」と呼ばれ、職人の育成に特化した非常に規律の厳しい内容となっています。まず新入社員は「1年間の丁稚見習いコース」を経て、正式な「丁稚」として採用されます。

この研修期間中の生活は、文字通り訓練漬けです。朝は5時に起床し、すぐに朝食の準備に取りかかります。朝食前には全員で1.5キロメートルのマラソンを実施。日中は業務に従事し、夕食後も個人の技術向上を目指した自主練習や、日々の学びを深めるためのレポート作成などに時間を費やします。食事の時間を除けば、基本的に休憩時間は設けられていません。

また、入寮後10日以内には、男女を問わず頭部を丸刈りにすることが義務付けられていました（ただし、この規則は2022年9月の見直しにより廃止されています）。プライベートに関しても厳しい制約があり、研修期間中は恋愛が禁止され、携帯電話の使用も許されていませんでした（携帯電話の使用禁止も2022年9月に廃止されています）。休日はお盆と正月にそれぞれ10日間ずつ与えられるのみで、それ以外の期間は家族との面会や電話連絡も原則禁止されており、手紙によるやり取りだけが認められていました。

このような徹底した研修制度が導入された背景には、社長である秋山利輝氏自身の経験があります。秋山社長は16歳で家具会社に入社し、7年間にわたる丁稚修行を経験しました。その共同生活の中で培われた人間性や職人としての技術、精神性が、自身のキャリアにとって不可欠だったと考えており、その信念に基づいて現在の研修制度を構築したのです。厳しい環境に身を置くことで、技術だけでなく、社会人としての基礎や人間的な成長を促すことを目的としています。

まとめ

秋山木工は、日本の伝統的な職人文化と現代のビジネスを融合させたユニークな企業です。迎賓館のような格式高い場所でも採用される一流の家具を作り出す技術力と、その技術を支える厳格な人材育成システムは、同社の大きな強みとなっています。特に、時代に逆行するかのような丁稚制度は賛否両論を巻き起こすこともありますが、それが同社独自の文化と高い品質維持に貢献している側面も否定できません。規律の一部が見直された現在も、その根底にある「人間性を磨き、一流の職人を育てる」という理念は変わることなく受け継がれています。

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