秋月辰一郎

秋月辰一郎：被爆地で医療に捧げた生涯

秋月辰一郎（1916年1月3日 - 2005年10月20日）は、医師であり、長崎聖フランシスコ病院の元院長です。彼は長崎への原爆投下時、自らも被爆しながら、医師として負傷した被爆者の治療に奔走しました。また、医療活動と並行して、長年にわたり原爆の証言を収集し、後世に伝える活動を行いました。

生い立ちと学歴

秋月辰一郎は1916年（大正5年）1月3日、長崎市万才町に生まれました。長崎県立長崎中学校、佐賀高等学校を経て、1940年（昭和15年）3月に京都帝国大学医学部を卒業しました。

医師としてのキャリア

大学卒業後、秋月は長崎医科大学（現・長崎大学医学部）物理的療法科の助手となり、永井隆の下で研究を行いました。その後、高原病院勤務を経て、1944年（昭和19年）に長崎浦上第一病院（現・聖フランシスコ病院）医長に就任しました。

1945年（昭和20年）8月9日、病院（爆心地から北東1.4km）で勤務中に被爆。自身も負傷しながらも、病院に運び込まれる負傷者の救護に全力を尽くしました。

戦後は、長崎県北高来郡湯江町（現・諫早市高来町）で開業医として地域医療に貢献。その後、湯江町立診療所勤務を経て、1952年（昭和27年）に聖フランシスコ病院院長に就任しました。

1986年（昭和61年）に聖フランシスコ病院顧問に就任するまで、院長として病院運営に携わりました。

社会活動と受賞歴

秋月は医師としての活動の傍ら、様々な社会活動にも積極的に参加しました。長崎の証言の会代表委員、原爆被爆者対策協議会、原爆資料保存会、原爆被災復元調査協議会役員などを歴任し、原爆に関する記録の保存と継承、被爆者援護に尽力しました。

その功績が認められ、1968年（昭和43年）に日本医師会最高優功賞、1972年（昭和47年）に吉川英治文化賞、長崎県民表彰、1976年（昭和51年）に長崎市市政功労表彰を受賞。1982年には国連軍縮特別総会に日本代表として出席し、1985年（昭和60年）にはローマ法王ヨハネ・パウロ2世より聖シルベストロ教皇騎士団勲章を授与されました。1994年（平成6年）には勲四等瑞宝章を受章、1995年（平成7年）には永井隆記念賞を受賞しています。

食養生と健康観

秋月は、玄米、味噌、塩を使った食事が原爆症の予防に効果があると主張しました。彼は病院の職員や患者に毎日、「塩辛い玄米のおにぎり」と「塩辛いカボチャの味噌汁」を提供したところ、原爆による症状が出なかったと述べています。この食養生に関する記述は彼の著書にも記されています。

著書と映画

秋月は、自らの体験や原爆に関する証言をまとめた著書を多数発表しました。

「長崎原爆記 - 被爆医師の証言」
「死の同心円 - 長崎被爆医師の記録」
* 『体質と食物　健康への道』

また、彼の生涯は、長編アニメーション映画「NAGASAKI 1945 アンゼラスの鐘」として映像化されました。

秋月平和賞

秋月辰一郎の平和への貢献を称え、長崎市の市民団体が2008年（平成20年）に秋月平和賞を創設しました。この賞は、核兵器廃絶に貢献する個人や団体に贈られています。

秋月辰一郎は、被爆者医療に尽力し、原爆の悲惨さを伝え続けた医師として、その名と業績は永く記憶されるでしょう。

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