秋本真吾

秋本真吾：被災地支援と競技の両立を果たす稀有なスプリントコーチ

秋本真吾氏は、1982年4月7日、福島県大熊町生まれの元陸上競技選手です。現在は、その経験と知識を活かし、Jリーグやプロ野球チームをはじめ、幅広い競技の選手を指導するトップクラスのスプリントコーチとして活躍しています。

競技人生：挫折と成功を繰り返しながらの成長

秋本氏の陸上競技人生は、決して順風満帆ではありませんでした。中学時代はバスケットボール部に所属していましたが、陸上競技へ転向し、高校時代は棒高跳や三段跳に励みましたが、目立った成果は残せず、苦戦を強いられました。しかし、高校2年生からトラック種目に挑戦し始め、400mハードルで才能を開花させます。3年生時には、東北大会6位入賞を果たし、インターハイ出場を決めるなど、着実に力を付けていきました。

国際武道大学に進学後は、着実に記録を伸ばし、3年目にはグランプリシリーズで初入賞。4年目には国体やグランプリシリーズで入賞を果たし、日本ランキングトップ10入りを果たしました。大学院時代には、日本選手権でファイナリストに名を連ね、自己ベストとなる50秒12を記録するなど、更なる高みを目指して努力を重ねました。大学院での修士論文は「大腰筋の筋肥大が疾走パフォーマンスに及ぼす影響」というテーマで、自身の競技経験と研究を結びつけた内容でした。

社会人時代は、アジアパートナーシップファンドを経て、釣具会社アムズデザインに所属。チームアイマの一員として活躍し、400mハードルでグランプリシリーズ2位、日本選手権5位という成績を残しました。さらに、200mハードルでは22秒80のアジア最高記録、日本最高記録を樹立するなど、輝かしい実績を残しました。全日本実業団4×400mRでは4走を務め、優勝に貢献しました。2010年にはプロに転向し、スポンサー契約を結びながら競技生活を続けました。しかし、2011年にはアキレス腱痛や左膝靭帯損傷に苦しみ、思うように競技に集中できない時期もありました。2012年のロンドンオリンピック選考会を最後に現役を引退しました。

地域貢献：故郷への深い愛情

秋本氏の出身地である福島県大熊町は、2011年3月11日に発生した東日本大震災と、それに続く福島第一原子力発電所事故により、甚大な被害を受けました。秋本氏の実家は原発から7kmの場所に位置しており、故郷の被災は、彼にとって大きな衝撃でした。

彼は、大熊町の子供たちへの支援を積極的に行っています。中学生にスパイクやユニフォームを寄付する活動や、自身のホームページで缶バッジを販売し、その収益でハードルを購入して大熊町の小学生にハードル授業を行うなど、具体的な行動を通して被災地支援を継続しています。

スプリントコーチとしての活躍

現役引退後は、スプリントコーチとして新たなキャリアをスタートさせました。Jリーグやプロ野球チーム、更にはラグビーやアメフト選手など、幅広い競技の選手を指導し、年間1万人を超える小中学生にも走り方教室を開催するなど、指導者としても多大な貢献をしています。

2016年から2021年までは阪神タイガースの臨時コーチを務め、2022年にはいわきFCのスプリントコーチに就任。2023年には、いわきFCから出向する形でマイナビ仙台レディースのスプリントコーチにも就任し、更には埼玉西武ライオンズのハイパフォーマンスグループのスプリントコーチにも就任するなど、その指導力は高く評価されています。

秋本真吾氏の経歴は、競技者としての成功と挫折、そして故郷への深い愛情と、指導者としての情熱が凝縮された、まさに波乱万丈の物語と言えるでしょう。今後も、彼の活躍から目が離せません。

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