秋菊の物語

『秋菊の物語』は、チャン・イーモウ監督が手掛けた1992年製作の中国映画です。コン・リーが主演を務め、農村を舞台に、一人の女性が理不尽な出来事に立ち向かう姿を、リアリズムを追求した映像で描き出しています。

概要

原作は陳源斌（チェン・ユアンピン）の小説『萬家訴訟』です。これまでのチャン・イーモウ監督作品とは異なり、本作では華美な映像表現を避け、素朴で現実的な映像美を追求しています。当初、監督はコメディ映画を構想していましたが、スタッフの意見を取り入れ、風刺的な要素を含んだヒューマンドラマとして完成しました。主要キャストであるコン・リー、雷恪生（レイ・ラオション）、戈治均（コオ・チーチュン）、劉佩琦（リュウ・ペイチー）以外の出演者は、すべて近隣の村に住む一般の人々が起用されています。このキャスティングは、作品にリアリティと独特の雰囲気を加えています。

『秋菊の物語』は、第49回ヴェネツィア国際映画祭で最高賞である金獅子賞を受賞し、主演のコン・リーも同映画祭で主演女優賞を受賞しました。これにより、作品は国際的な評価を得るに至りました。

あらすじ

物語は、身重の秋菊の夫・慶來が村長との些細なトラブルから怪我をするところから始まります。村長は慶來の股間を蹴り、怪我をさせたにも関わらず、謝罪を拒否します。村長の態度に怒った秋菊は、郡の役場に訴えを起こします。担当の李巡査は、村長に賠償金を支払わせることで和解させようとしますが、村長は賠償金を支払うだけで、謝罪の言葉は一切口にしません。村長の反省のない態度に納得できない秋菊は、さらに上の県の役所に訴えますが、結果は変わりません。それでも諦めない秋菊は、市の役所へと訴えを続けます。秋菊の目的は、ただ村長に謝罪してほしいというシンプルなものですが、事態は次第に大きくなっていくという展開です。

キャスト

秋菊（チュウチュィ）：コン・リー
村長・王善堂（ワン・シャンタン）：雷恪生（レイ・ラオション）
巡査・李（リー）：戈治均（コオ・チーチュン）
夫・萬慶來（ワン・チンライ）：劉佩琦（リュウ・ペイチー）
妹・妹子（メイツ）：楊柳春（ヤン・リュウチュン）
医者：葉軍（イエ・チュン）
慶來の父：朱萬清（チュウ・ワンチン）
村長の妻：楊恵琴（ヤン・ホエィチン）
宿の老人：林子（リン・ツ）
局長・厳（イェン）：崔絡紋（ツォィ・ルオウェン）
弁護士・呉（ウー）：王建法（ワン・チェンファ）

スタッフ

監督：張芸謀（チャン・イーモウ）
原作：陳源斌（チェン・ユアンピン）『萬家訴訟』
脚本：劉恒（リュウ・ホン）
撮影：池小寧（チー・シアオニン）、于小群（ユイ・シアオチュン）、盧宏義（リュウ・ホンイー）
美術：曹久平（ツァオ・チオウピン）
音楽：趙季平（チャオ・チーピン）
録音：李嵐華（リー・ランホア）
編集：杜媛（トゥ・ユアン）
日本語字幕翻訳:田村志津枝

『秋菊の物語』は、社会的なテーマを扱いながらも、一人の女性のひたむきな姿を丁寧に描いた作品です。そのリアリズム溢れる映像と、コン・リーの力強い演技は、観る者の心に深く残るでしょう。また、素朴な人々の暮らしぶりを通して、当時の中国社会の一面を垣間見ることができる作品でもあります。

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