秋葉弘道

秋葉 弘道

概要

秋葉 弘道（あきば ひろみち）は、1968年（昭和43年）生まれの日本の経営者です。特に、自身が創業したスーパーマーケット「アキダイ」の社長として広く知られています。

生い立ちと学生時代

東京都で生まれた秋葉は、後に埼玉県内の富士見町（現在の富士見市）や入間郡三芳町へと転居しながら育ちました。幼い頃は非常に内気で、人前で話すことが苦手だったと言います。しかし、この口下手な自分を克服しようと、中学時代には体育祭で応援団長を務め、高校時代には生徒会長に立候補し経験するなど、積極的に人前に立つことに挑戦しました。

高校一年生の頃に始めた八百屋でのアルバイトが、彼の人生における大きな転機となります。この経験を通して、彼は自身にとっての「天職」と呼べる仕事に出会いました。アルバイトとして働く中で、彼は先輩たちの接客術を熱心に観察し、お客様とのコミュニケーションが商品の売上に直結することを肌で感じ取ります。この気づきを活かし、彼は独自の工夫を凝らしたお客様との会話術を磨きました。その結果、一日で130箱もの桃を売り上げるなど驚異的な販売成績を挙げ、市場では「天才桃売り少年」としてその名を知られるようになります。また、彼は就業時間外にも進んで店の開店準備を手伝うなど、熱心な働きぶりを見せました。その努力が認められ、アルバイト二年目にして売場の値付けという重要な業務を任されるまでになります。

社会人経験と八百屋への回帰

埼玉県立狭山工業高等学校を卒業後、家計を支えるために大崎電気工業に就職します。企業でもその実力は高く評価され、将来を嘱望される存在となります。しかし、高校時代に三年間情熱を注いだ八百屋でのアルバイト経験が忘れられず、サラリーマンとしてのキャリアを一年ほどで終え、かつて働いていた八百屋に正社員として再び入社することを決意します。

「出戻り」という形での再スタートとなった八百屋では、商品の仕入れから販売までの全てを文字通り体に叩き込みました。毎朝五時半には市場へ足を運び、自ら商品を買い付けます。卸業者とのやり取りを通して、青果物の目利きの方法や、産地、天候によって変動する価格の交渉術などを実践的に学びました。顧客や市場関係者との間に確固たる信頼関係を築き上げ、わずか三年後の22歳という若さで店の店長を任されるまでになります。業界内では「数十年にひとりの逸材」として話題になるほどのスピード出世でした。

独立への道のり

しかし、秋葉は八百屋という仕事が本当に自分にとっての天職なのかを確かめたいという思いを抱きます。そこで、一度は運送業への転職を決意します。ですが、転職後も仕事の合間に近所の八百屋を覗いたり、将来自分の店を開けそうな空き物件を探したりするうち、やはり八百屋への情熱は冷めないどころか、自分の店を持ちたいという気持ちがますます強くなっていきました。

そして、彼は東京都練馬区関町に自身のスーパーマーケット「アキダイ」の第一号店をオープンさせます。縁もゆかりもなかった練馬区に関町を選んだ背景には、若い経営者への信頼が得られず物件探しに難航する中、偶然にもテナントの大家の娘が自分と同い年だったという事実がありました。「娘と同じ歳だから」という理由で大家の温かい理解と協力を得られ、念願の開業にこぎ着けたのです。秋葉はこの経験を振り返り、「門前払いばかりだった中で、人の有難みを心から感じた」と述べています。

開業当初の苦難と成功

しかし、開店後も道のりは平坦ではありませんでした。駅から離れた住宅地という立地条件も影響し、開業当初は、開店から一時間半もの間、お客様が一人も訪れない日もあるなど、売上は極めて低迷しました。開業を応援してくれた大家や、資金面で支えてくれた家族の期待に応えたい一心で、「この場所で少なくともあと一年は、どんな困難があっても諦めずにやり遂げよう」と固く決意します。高校時代のアルバイトで培った接客トークや商品知識を最大限に活かし、一人ひとりのお客様に全力で向き合う熱意ある接客を続けました。その努力が徐々に実を結び、品揃えや野菜に関する豊富な知識がお客様の間で評判となり、口コミによって一年後には繁盛店へと成長を遂げました。

その後、アキダイは松戸市や府中市、杉並区や世田谷区など、東京都内外に店舗網を広げ、飲食店なども含めると全12店舗、従業員数200名以上、年商40億円を超える規模へと発展しました。会社が大きく成長した現在でも、秋葉は創業当時と変わらず毎朝市場に足を運び、業者との密なコミュニケーションを取りながら自ら商品の買い付けを行っています。

メディアへの出演

秋葉はメディアへの露出が非常に多いことでも知られています。テレビに出演し始めたのは2009年頃からで、その頻度は極めて高く、多い日には一日に複数本の取材を受けることも珍しくありません。時にはテレビ局のスタッフが店頭で順番待ちをする光景も見られると言います。スケジュールの都合がつく限り、当日の取材依頼にも可能な限り対応しています。これは、「青果業界の『今』を分かりやすく、正直に伝えるのが自分の使命である」という強い思いがあるからです。メディア出演は基本的に全てノーギャラで行っています。あまりにも頻繁にテレビに出るため、彼の物真似をするお笑い芸人が現れたり、自身もバラエティ番組に出演するなど、その影響力は広がりを見せています。2020年には年間で300本以上のテレビ番組に出演するなど、その活動は多岐にわたります。

著書

『いつか小さくても自分の店を持つことが夢だった スーパーアキダイ式経営術』（小学館、2022年）

関連項目

アキダイ
八百屋
スーパーマーケット

外部リンク

* アキダイ公式HP

もう一度検索