秘剣 (映画)

時代劇映画『秘剣』：信念を貫いた剣士の物語

1963年、稲垣浩監督のメガホンのもと、時代劇映画『秘剣』が公開されました。主演を務めたのは、六代目市川染五郎（後の九代目松本幸四郎、現在の二代目松本白鸚）です。モノクロームの画面を通して描かれるのは、剣術の道に生きる男の生き様、そして、揺るぎない信念です。

物語の舞台は寛永年間。早川典膳は、ある藩に剣術指南役として仕えていました。しかし、宮本武蔵が藩を訪れた際、典膳の振る舞いが武蔵の癇に障り、典膳は職を解かれてしまいます。

職を失った典膳は、一人山中に籠もり、剣の修行に打ち込みます。厳しい鍛錬の末、彼は独自の奥義を会得します。しかし、その奥義は藩の掟を破るものでした。そのため、典膳は藩から追われる身となり、逃亡生活を送ることになります。

典膳を演じた六代目市川染五郎の演技は、まさに圧巻です。剣術の達人としての風格、そして、追われる身となった際の孤独や苦悩を、見事に表現しています。

物語を彩る脇役陣も、豪華な顔ぶれです。長門裕之、田村奈巳、中川ゆき、池内淳子といった、当時を代表する名優たちが脇を固め、それぞれの持ち場で存在感を放っています。さらに、月形龍之介が演じる宮本武蔵も、物語に深みを与えています。

『秘剣』は、単なる時代劇アクションにとどまりません。剣術を通して描かれるのは、人間の生き様、信念、そして、時代の流れです。典膳の葛藤、そして、彼を取り巻く人々の思惑が複雑に絡み合い、最後まで目が離せない展開となっています。

稲垣浩監督の演出も素晴らしく、モノクロの映像ながら、時代劇特有の緊迫感と重厚感を巧みに演出しています。山田一夫による撮影、植田寛による美術、石井歓による音楽など、スタッフの技術と才能が融合し、完成度の高い作品に仕上がっています。

田中友幸が製作を務め、脚本は木村武と稲垣浩が共同で執筆しています。撮影は山田一夫、美術は植田寛、編集は武田うめ、音楽は石井歓が担当しました。助監督には高瀬昌弘と小谷承靖が、衣装は鮫島喜子が、殺陣は久世龍がそれぞれ携わっています。

原作は五味康祐の小説「秘剣」です。この小説の世界観を見事に映像化することに成功した作品として、高い評価を得ています。

『秘剣』は、時代劇映画の中でも特に高い評価を受けている作品の一つです。その重厚なストーリー、迫力のあるアクションシーン、そして名優たちの演技は、多くの観客を魅了し続けています。もし、あなたがまだ『秘剣』を観たことがないなら、ぜひ一度鑑賞することをお勧めします。時代劇映画の傑作を、ご自身の目で確かめてみてください。併映作品として『国際秘密警察 指令第8号』が上映されました。

もう一度検索