秘密 (オペラ)

ベドルジハ・スメタナが作曲した3幕構成のチェコ語オペラ、『秘密』（チェコ語原題：Tajemství）。リブレットを手がけたのは、前作『口づけ』でも共同作業を行ったエリシュカ・クラースノホルスカーです。

1878年9月18日、プラハのNové České Divadloにて、アドルフ・チェフの指揮により初演されました。

このオペラの構想は、『口づけ』が初演されたわずか2週間後に、クラースノホルスカーからスメタナに伝えられました。しかし、詳細なリブレットの内容は、翌年1877年の夏までスメタナには明かされませんでした。この時送られた草案は、フランスの寓話作家ラ・フォンテーヌの作品『女と秘密』などを参考に編まれています。

リブレット作者のクラースノホルスカーは、当時スメタナが暮らしていたヤケブニツェから望むベズヂェズ山の麓にある小さな町ベラーで創作活動を行っていました。作曲は、スメタナが進行する病とそれに伴う抑うつに苦しみながら進められました。スメタナはクラースノホルスカーの草稿にわずかな変更を加え、初演に間に合わせるべく1878年8月4日には総譜をNové České Divadloに送付しました。この時期の作曲は、『ボヘミアのブランデンブルク人』や『リブシェ』とは異なる方向性を示しています。

本作は、混合的な性質を持つ序曲で始まり、合唱、デュエット、アリア、アンサンブルが連続して配置されています。『売られた花嫁』や『二人のやもめ』のように多数の登場人物が織りなす物語とは異なり、本作では、登場人物個々の感情や日常的な情景の描写に、より焦点が当てられています。

残念ながら、このオペラは初演後、スメタナが期待したほどの成功を収めることはできませんでした。スメタナの存命中には、わずか10回程度しか上演されなかったと記録されています。その後、約20年間もの間、一度も上演されない時期が続きました。

転機が訪れたのは、スメタナの没後約40年弱にあたる1922年です。プラハの国民劇場で再び上演され、レパートリーとして復活を果たしました。チェコ国外での上演としては、1955年にジャック・ウェストラップの指揮によりオックスフォードでイギリス初演が行われました。さらに1972年には、ロンドンのカムデン・フェスティバルでも、ヴィレム・タウスキーの指揮で上演されています。

物語は、20年前に遡る出来事から始まります。当時議員であったカリナは、ロザ・マリノヴァに結婚を申し込みましたが、貧乏を理由に断られてしまいました。その後、カリナは同程度の地位の女性と結婚しましたが、妻には先立たれており、現在は富を築き誇示しています。一方、ロザは未だ独身で、かつてカリナの求婚を断ったことを後悔しています。

カリナの家は、彼の政敵でありロザの兄であるマリナ議員の家の目と鼻の先に建てられています。カリナは、自身の息子ヴィテクが、政敵マリナの娘ブラジェンカと密かに恋仲になっていることには気づいていません。ある日、カリナは偶然、古い文書と地図を発見します。そこには、かつての修道士バルナバーシュが、ベズヂェズ山に隠した「宝」を見つける方法が記されていました。

借金を抱えていたカリナは、その指示に従い宝を探す決意をします。しかし、彼が掘り進めたトンネルは、なんと政敵マリナの家の床下へと通じていました。そこでカリナは、息子ヴィテクがブラジェンカと結婚して家を出る決意をマリナに告げている場面を耳にします。

物語が進むにつれて、バルナバーシュが示した「宝」の本当の意味が明らかになります。それは、かつての恋人ロザ自身だったのです。オペラは、カリナとロザ、そしてヴィテクとブラジェンカという二組のカップルの結婚式という、幸せな結末を迎えて幕を閉じます。

このオペラにはいくつかの録音が存在します。代表的なものとしては、1982年にズデニェク・コシュレル指揮、プラハ国民劇場管弦楽団・合唱団による録音（主な歌手：ヤロスラフ・ホラーチェク、ヴァーツラフ・ズィーテク、ヴェラ・ソウクポヴァー、ダニエラ・ショウノヴァー他）があります。また、1958年にはヤロスラフ・クロンボルツ指揮、プラハ国民劇場管弦楽団・合唱団による録音（主な歌手：カレル・カラシュ、プルジェミスル・コチー、シュチェパンカ・シュチェパノヴァー、シュテファ・ペトロヴァー他）も制作されています。

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