秘密 (東野圭吾)

東野圭吾『秘密』

『秘密』は、東野圭吾氏によって1998年に発表された小説であり、文藝春秋から刊行されました。長らくヒット作に恵まれなかった東野氏にとって、本作はブレイクのきっかけとなった出世作として知られています。第120回直木賞、第20回吉川英治文学新人賞、第52回日本推理作家協会賞（長編部門）にノミネートされ、最終的に日本推理作家協会賞を受賞しました。

概要

この作品は、1999年に滝田洋二郎監督によって映画化され、広末涼子と小林薫が主演を務めました。さらに、リュック・ベッソン制作、ヴァンサン・ペレーズ監督、デイヴィッド・ドゥカヴニー主演でリメイクされ、『秘密 THE SECRET』として2007年にアメリカとフランスで公開されました。
2010年には、志田未来主演でテレビドラマ化もされています。2017年には中国でウェブドラマ版が制作・放送されました。

キャッチコピーは「運命は、愛する人を二度奪っていく」。

あらすじ

物語は、主人公である杉田平介とその家族を中心に展開します。ある冬の日、妻・直子と娘・藻奈美が乗ったスキーバスが事故に遭い、直子は死亡、藻奈美は奇跡的に一命を取り留めます。しかし、藻奈美の体には死んだはずの直子の魂が宿ってしまうのです。

平介は、娘の体に宿った妻との奇妙な生活を送る中で、次第に心のずれを感じ始めます。直子は医学部を目指し、進学校へ入学。しかし、奇妙な生活が限界を迎えたある日、藻奈美の意識が戻ります。その後、直子と藻奈美は交互に意識を入れ替えながら生活するようになりますが、次第に直子の意識は薄れていきます。

そして、藻奈美は直子が平介と初めてデートをした山下公園で、平介に別れを告げます。25歳になった藻奈美は、事故を起こしたバス運転手の息子である根岸文也と結婚。結婚式当日、平介は直子がまだ藻奈美の中で生きていることを悟り、直子の意思を尊重することを決意します。

登場人物

杉田平介：自動車部品メーカー勤務のエンジニアで、物語の主人公。
杉田直子：平介の妻。事故で死亡するが、魂が娘・藻奈美に宿る。
* 杉田藻奈美：平介と直子の娘。事故後、直子の魂が宿る。

映画 (1999年)

1999年9月25日に公開された映画版『秘密』は、原作とは設定が一部異なり、藻奈美が高校生の時から物語が始まります。原作者の東野圭吾氏も大学教員役で出演しています。

テレビドラマ (2010年)

2010年10月15日からテレビ朝日系列で放送されたテレビドラマ版は、志田未来が主演を務めました。ドラマでは、舞台設定が原作・映画とは異なり、2007年の夏、藻奈美が16歳の時から物語が展開されます。

作品のテーマ

『秘密』は、愛、喪失、そして再生といった普遍的なテーマを扱っています。事故によって引き裂かれた家族の絆、そして、奇妙な状況下で育まれる新たな愛の形を描き出し、読者の心を深く揺さぶる作品です。

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