秩父鉱山

秩父鉱山の歴史と地質

埼玉県秩父市の中津川上流に位置していた秩父鉱山は、400年以上にわたる歴史を持つ鉱山です。古くは1600年頃、甲斐武田氏によって金や砂金の採掘が行われていたと伝えられています。その後、1765年には平賀源内も金鉱脈を求めて入山した記録が残っています。

長い歴史の中で、秩父鉱山は様々な鉱物を産出しました。初期の金・砂金採掘から始まり、その後は鉄鉱石の開発が盛んになり、1910年には東京の柳瀬商工株式会社が買収、本格的な開発に乗り出しました。1916年には鉱山と皆野間を結ぶ架空索道が建設され、鉱石輸送の効率化が図られました。

1937年には日窒鉱業開発株式会社（現在のニッチツ株式会社の前身）が鉱山を買収し、本格的な操業を開始。1950年には日窒鉱業株式会社が設立され、その後は亜鉛や磁鉄鉱などの採掘も盛んに行われるようになり、最盛期には年間50万トンもの鉱石を産出する大鉱山となりました。1969年には珪砂の採掘も開始されました。

地質学的特徴

秩父鉱山周辺の地質は、秩父帯に属する堆積岩が主体です。しかし、石英閃緑岩マグマの貫入によって接触変成作用を受けており、特に石灰岩との接触部にはスカルン鉱床が形成されています。このスカルン鉱床から、結晶質石灰石（大理石）を始めとする様々な金属鉱物が産出されました。この地質学的特徴が、秩父鉱山における多様な鉱物資源の存在を支えていたと言えるでしょう。

鉱山閉山とその後

高度経済成長期を支えた秩父鉱山ですが、時代の変化とともに金属鉱物の需要は減少。1978年には金属鉱物の採掘を中止し、その後は石灰石（大理石）の採掘を継続していました。しかし、2022年9月30日、結晶質石灰石事業の終了に伴い、長い歴史に幕を閉じました。同年12月31日には、ニッチツ秩父事業所と秩父営業所も閉鎖されました。

長きにわたり地域経済を支え、多くの人の生活と深く関わってきた秩父鉱山。その歴史は、日本の鉱山史における重要な一章を刻んでいます。現在は閉山していますが、その歴史的・地質学的価値は高く評価されており、今後の活用方法が検討されています。

アクセス方法

秩父鉱山へのアクセスは、埼玉県道210号中津川三峰口停車場線と金山志賀坂林道を利用することになります。公共交通機関では、秩父鉄道の駅からのアクセスとなりますが、駅から鉱山跡地までは距離があるため、自家用車でのアクセスが推奨されます。

参考文献

黒沢和義『写真と証言でよみがえる 秩父鉱山』同時代社、2015年、ISBN 978-4886837905

関連情報

株式会社ニッチツ資源開発本部秩父事業所
* 秩父鉱山簡易郵便局

かつて活気に満ちていた秩父鉱山。その跡地は、歴史と自然が織りなす貴重な空間として、新たな活用方法が模索されています。

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