移動遊園地

移動遊園地とは

移動遊園地は、常設の施設とは異なり、各地を巡業しながら興行を行う娯楽施設です。単一の場所に留まることなく、ある期間が過ぎると別の場所へと移っていきます。その内容は多岐にわたり、スリル満点のアトラクション、運や技量を試すゲーム、様々な飲食物の販売、物品の販売、さらには肝試しや動物を使った出し物などが含まれます。

そのルーツは19世紀のサーカスと共通する部分が多く、どちらも町の近郊や広場に一時的に設営され、一定期間の公演後に次の目的地へ移動するという形態をとります。歴史的には、1893年にシカゴで開催されたコロンブス万国博覧会が、移動遊園地の発展における経済的な契機の一つとなったと言われています。近年では、移動遊園地の文化が国際的にも評価されており、2024年にはベルギーとフランスにおけるその独特な文化がユネスコの無形文化遺産に登録されています。

運営と組織

世界には様々な規模や形態の移動遊園地が存在しますが、その運営構造には共通点が見られます。多くの移動遊園地では、アトラクションや売店、ゲームなどの個々の出し物を、単一の運営主体が全て賄うわけではありません。むしろ、全体を統括する運営者と契約を結んだ、個々の独立した業者がそれぞれを担当している場合が一般的です。これらの独立業者は、全体の運営者に対して、売上の一部を契約に基づいて支払います。また、移動遊園地に参加する独立業者同士は、相互に協力関係にあったり、家族経営や血縁関係によって結ばれていたりすることも少なくありません。

大規模な移動遊園地の運営者は、一つの大きな組織をいくつかの「ユニット」や部門に分けて管理しています。それぞれのユニットは、およそ6つ以上のアトラクションなどで構成されることが多く、このユニット単位で稼働させることで、運営者は同じ週に複数の場所で同時に移動遊園地を展開することが可能となります。

機材の運搬は、主にトラックが使用されます。アトラクションの中には、土台に車輪が付いており、他の部分を解体・折り畳んでそのまま陸路を移動できるものもあります。食品の屋台なども通常は車両で牽引されますが、精巧なものは解体して梱包する必要があります。ごく一部の非常に大規模な移動遊園地では、機材を鉄道で運搬することもあります。運営者は、数シーズン先まで綿密なスケジュールを計画しており、例えば冬の期間は南部の温暖な地域で興行し、夏場の暖かい時期に合わせて北部へと移動するなど、気候や地域性を考慮した巡回ルートが組まれます。

飲食物と出し物

移動遊園地で提供される飲食物は多様です。2000年代初頭の例では、エンパナーダやタコスなども見られました。その他にも、揚げマーズバーや揚げトゥインキーといった変わり種の揚げ菓子、極小の粒状アイスクリームであるディッピン・ドッツなどが提供されることもあります。

出し物としては、子供から大人まで楽しめるメリーゴーランドが定番です。また、来場者が腕前や運を試すカーニバルゲームも人気で、射的や、ハンマーで土台を叩いて高さを競うハイストライカーなど、様々な種類のゲームが用意されています。

関連施設・イベント

移動遊園地の文化や歴史に触れることができる場所もあります。パリ12区にある「ミュゼ・デ・ザール・フォラン」（縁日博物館とも訳される）は、移動遊園地に関する貴重な品々を展示する博物館です。また、ロンドンで冬の期間に開催される「ハイド・パーク・ウィンターワンダーランド」は、大規模な移動遊園地の要素を取り入れた祭典として知られています。

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