移川子之蔵

移川 子之蔵（うつしかわ ねのぞう）

移川子之蔵は1884年11月16日に福島県二本松市に生まれ、1947年2月9日に急性肺炎により亡くなった日本の著名な民族学者及び人類学者です。彼の学問の道は、アメリカへの留学から始まり、1914年にはシカゴ大学を卒業し、1917年にはハーバード大学で哲学博士号を取得しました。

彼のキャリアは、1919年に慶應義塾大学文学科の講師に就任したことから始まり、1921年には東京商科大学（現在の一橋大学）において教授として活動を開始しました。その後、台北高等学校教授に転任し、欧米のさまざまな国での在外研究に従事しました。この期間、彼は学術的な探究のために約1年10カ月を費やしました。

1928年、台湾に設立された台北帝国大学では、文政学部の教授として招かれ、土俗学と人種学の講座を開設しました。ここでは、研究室や標本室を設立し、台湾の原住民及び太平洋南島民族文化の収集作業に力を注ぎました。移川は台湾の独自の文化を深く探求し、その成果を多くの著作に結実させました。

特に1937年の夏には、オランダに訪れ、台湾のオランダ統治時代に関する資料を収集し、2万5千枚もの写真を撮影しました。帰国後には、これらの資料を整理し、約200冊の「台湾史料」としてまとめました。彼の研究は台湾の歴史に対する新たな視点を提供するものとなりました。

1940年には台北帝国大学文政学部長に昇進し、1943年には南方人文研究所の所長としても活動を始めました。戦後、彼は日本に帰国し、在日米軍との文化研究プロジェクトにも関与しました。その業績は、今でも日本と台湾の文化的な理解を深める上での重要な基盤とされています。

移川は、その生涯にわたって数多くの著作を残しました。主な著作には、1929年の『自然民族の話』、1930年の『臺灣の土俗、人種』、1931年の『紅頭嶼ヤミ族と南方に列なる比律賓バタンの島瓡。口碑傳承と事實』などがあります。さらに、彼は多くの学術論文や資料集を発刊しており、特に台湾や南洋の民族に関する研究で知られるようになりました。

彼の作品は、台湾の民族文化や歴史に対する洞察を深めるだけでなく、民族学、人類学の枠を超えた多様な視点を提供しています。移川子之蔵は、学問に対する情熱と文化に対する深い理解を具現化した学者であり、その業績は今なお評価されています。彼は1947年に64歳でこの世を去るまで、学問に対して尽力し続けました。

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