移民の歌

レッド・ツェッペリン「移民の歌」：北欧神話とアイスランドが織りなすロックの叙事詩

「移民の歌」（Immigrant Song）は、レッド・ツェッペリンが1970年に発表したアルバム『レッド・ツェッペリン III』の冒頭を飾る楽曲。わずか2分20秒ほどの短い曲ながら、その強烈なインパクトとドラマティックな展開で、彼らの代表曲の一つとして広く知られています。作詞作曲は、ジミー・ペイジとロバート・プラント。

楽曲誕生の背景：アイスランドでのインスピレーション

この曲は、1970年前半に他の『レッド・ツェッペリン III』収録曲と同様にリハーサルが行われていましたが、決定的なインスピレーションは同年6月のアイスランド公演で得られました。バンドは英国とアイスランド政府の文化交流プログラムの一環でレイキャヴィークでの公演に招待されたのですが、公演前日に現地で公務員のストライキが発生。公演が危ぶまれる中、地元の学生たちの尽力により、6月22日にLaugardalshöll Hallでの公演が実現し、大成功を収めました。この経験がロバート・プラントに大きな刺激を与え、歌詞の着想へと繋がったのです。

歌詞に込められた意味：ヴァイキングの歴史と北欧神話

歌詞は、アイスランドでの出来事に加え、ヴァイキングの歴史と北欧神話を参照しています。冒頭のコーラス「land of the ice and snow」はアイスランドを指し、「From the midnight sun where the hot springs flow」は、白夜と温泉というアイスランドの特徴を表現しています。続く「The hammer of the gods」は、北欧神話の神トールが持つ鉄槌ミョルニルを意味し、ヴァイキングの征服と神々の力を重ね合わせています。

世界的なヒットと評価

「移民の歌」は、アメリカや日本などでシングルカットされ、アメリカではビルボードチャートで16位を記録するヒットとなりました。B面にはアルバム未収録の「ヘイ・ヘイ・ホワット・キャン・アイ・ドゥ」が収録されています。

ステージでの圧倒的な存在感

この曲は、ライブパフォーマンスでも非常に重要な位置を占めていました。1970年7月のバス・フェスティバルで初披露されて以来、約2年間コンサートのオープニングを飾るメドレーとして演奏され、観客を熱狂させました。ライブでは、レコード版にはないギターソロが追加されるなど、よりエネルギッシュなアレンジが施されていました。

多方面での使用：戦いのテーマから映画音楽まで

「移民の歌」は、その印象的なイントロ、特にプラントの雄叫びが、戦いのテーマ曲としてテレビ番組などで頻繁に使用されています。また、プロレスラーの入場テーマ曲や、NFLミネソタ・バイキングスの試合前テーマ曲としても使用されるなど、幅広い分野で親しまれています。近年では、映画『マイティ・ソー バトルロイヤル』の挿入歌として使用され、若い世代にも新たなファンを獲得しました。

様々なアーティストによるカバー

「移民の歌」は、数多くのアーティストによってカバーされています。クイーンは1986年の西ベルリン公演でこの曲を披露し、布袋寅泰は「Immigrant Song」としてカバー。映画『ドラゴン・タトゥーの女』では、トレント・レズナーとカレンOによるダークでインダストリアルなカバーが使用され、話題となりました。

「移民の歌」は、レッド・ツェッペリンの音楽性を象徴するだけでなく、ロックの歴史においても重要な楽曲の一つとして、これからも長く愛され続けるでしょう。

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