稲付川

稲付川（いなづけがわ）

概要

稲付川は、東京都北区を流れる河川で、かつては稲付用水、中用水、北耕地川とも呼ばれていました。石神井川から分かれた根村用水がそのルーツです。現在、川のほとんどは暗渠となっており、排水路としての役割を担っています。開渠として残っているのは、最下流部の国道122号（北本通り）の北町橋を越えた先から隅田川までの約150メートルのみです。しかし、この区間も隅田川の堤防で遮られており、直接の接続は見られません。開渠部分は水がほとんど流れず、水たまりのようになっているのが特徴です。また、溜まった水が暗渠部分へと逆流する現象も確認されています。

歴史

稲付川は、徳川家綱の時代に開削されたという説がありますが、明確な資料は残っていません。1967年以降の工事により、ほぼ全域が暗渠化されました。かつては、周辺の村々の農業用水や生活用水として利用され、特に下流の村々にとって重要な水源でした。しかし、上流の村々との間で利水を巡る対立が絶えず、明治時代には村民同士が衝突する騒動も発生しています。これらの対立は、東京府の仲裁によって解決されました。

流域

稲付川は、石神井川から分岐し、環七通りと東武東上線の交点近くで始まります。智清寺には、かつて中用水に架かっていた石橋が残っています。その後、川は北東方向に流れ、環七通り姥ヶ橋陸橋の下を通り、北区立梅木小学校の南側で東に大きくカーブします。さらに、西が丘・赤羽西と上十条・十条仲原の境界線である四辻へと進みます。この四辻には、かつて水車小屋や川魚料亭「遊鯉園」がありました。現在、「遊鯉園の坂」という名前にその名残を留めています。四辻からは、旧北区立清水小学校の北側を経由し、旧岩槻街道をくぐります。神谷付近には、かつて赤羽飛行場がありましたが、現在は区画整理が進み、その痕跡はほとんど残っていません。

現在の状況

現在、稲付川の河道跡の一部は遊歩道として整備されています。幅は約4メートルで、自動車の通行はできません。歩行者や自転車にとっては安全な道ですが、夜間は街灯が少ないため注意が必要です。また、生活道路として使われている部分もありますが、こちらは自動車が通行するため、散策の際には注意が必要です。ただし、姥ヶ橋から上流方向へ約10メートルの区間と、北町橋より先の隅田川までの区間は、立ち入りが禁止されています。

参照

『江戸明治東京重ね地図』エーピーピーカンパニー、2009年。
廃河川

まとめ

稲付川は、かつて地域住民の生活を支えた重要な河川でしたが、都市化とともにその姿を変え、現在はそのほとんどが暗渠となっています。しかし、一部の開渠や遊歩道には、かつての川の面影が残されています。この川の歴史は、都市開発と自然環境の変遷を物語る貴重な証拠と言えるでしょう。

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