稲古舘古墳

稲古舘古墳

稲古舘古墳（いなふるだてこふん）は、福島県須賀川市稲に存在する歴史的な古墳です。この古墳は円形の墳形を持ち、直径は約12メートル、高さは1.2メートルに達します。現在は墳丘の跡が見られないものの、その出土品である銅漆作の大刀が福島県の重要文化財に指定されています。

概要

稲古舘古墳は、奥羽山脈の東側に位置する丘陵の頂上に築かれており、奈良時代の8世紀ごろに造られたと考えられています。この古墳は、小型の円墳であり、1997年に実施された発掘調査によって、様々な副葬品が発見されました。

発掘調査の結果、墳丘からは土師器が出土し、埋葬施設としては切石積の横穴式石室が確認されています。この石室は南南東方向に開口しており、石材の一部は盗掘の影響を受けて欠失していますが、石室内部からは大刀1本、鉄鏃9本、鉄釘2本、刀子2本などの副葬品が見つかりました。特筆すべきは、大刀のデザインが正倉院に所蔵されている金銅鈿荘大刀と似ている点です。このため、稲古舘古墳は奈良時代の文化を代表する重要な遺跡とされています。

被葬者と地域

この古墳の被葬者については、近隣にある栄町遺跡と関連が指摘されています。栄町遺跡は石背郡（磐瀬郡）の郡衙跡と推定されており、本古墳の被葬者は当時の地方支配者、すなわち郡司クラスの人物であった可能性が高いと考えられています。これにより、古墳の位置とその歴史的背景が、地域の政治的な動きと深く関連していたことが示唆されます。

埋葬施設の構造

古墳内の埋葬施設は、横穴式石室で構成されています。玄室のサイズは長さ2.5メートル、幅1.8メートル、現存高さは約1メートルです。羨道部分も同じく長さ2.5メートルで、全体として閉じられた構造をしています。石室の壁は柱状切石を使用し、天井は割石を用いて支えられています。羨道も割石積みで造られており、当時の技術が伺われます。

文化財としての重要性

出土した銅漆作の大刀は、2008年に福島県指定重要文化財に指定されました。この文化財は須賀川市立博物館に保管されており、地域の歴史や文化の大切な証言となっています。稲古舘古墳は、火葬が主流だった奈良時代においても、古墳という形で特異な存在であり、地域の歴史には欠かせない遺跡です。

参考文献

本記事では、稲古舘古墳に関する情報をいくつかの文献に基づきました。史跡説明板や専門書からも詳細な知見が得られ、古墳の意義がさらに深く理解できるでしょう。

このように、稲古舘古墳は奈良時代の文化を感じる貴重な遺跡であり、今後もその研究に期待が寄せられています。

もう一度検索