稲川素子

稲川素子の生涯：苦難を乗り越え、国際社会で活躍した女性

稲川素子（いながわ もとこ）は、1934年1月18日に福岡県柳川市で生まれ、2024年5月13日に心不全のため90歳で亡くなった日本の芸能プロモーターです。株式会社稲川素子事務所の代表取締役として、外国人タレントの育成・マネジメントに尽力しました。

恵まれた幼少期から一転、戦後の貧困へ

旧家出身の父のもと、広大な屋敷で何不自由なく育ちました。しかし、第二次世界大戦後の農地改革により家計は困窮し、食糧難の時代を過ごします。高校時代には栄養失調で入退院を繰り返し、体重が激減するほどでした。そんな彼女を救ったのは、GHQの最高司令官ダグラス・マッカーサーでした。教会の聖歌隊に参加していた際、マッカーサーからベーコンエッグをご馳走になり、命を繋いだと述べています。

困難を乗り越え、結婚、そして起業へ

女子聖学院高等部を卒業後、慶應義塾大学文学部に入学しますが、盲腸の手術時の麻酔ミスが原因で右半身が麻痺し、中退を余儀なくされます。その後、三井鉱山勤務の稲川長康氏と結婚し、娘の佳奈子さんを出産。帝王切開の際には、麻酔のトラウマから無麻酔での出産に挑み、無事成功させています。娘の佳奈子さんはピアニストとして活躍しています。

専業主婦を経て、51歳で外国人タレント専門の芸能事務所「稲川素子事務所」を設立。長年の夢だった大学への再入学を果たし、慶應義塾大学文学部の通信教育課程でドイツ文学を専攻。さらに72歳で東京大学大学院に進学し、国際社会科学を専攻。「戦後日本の入国管理政策の変遷と課題」をテーマに博士論文を執筆し、82歳で博士号を取得しました。

幅広い分野での活躍

稲川素子は、その経験から各種講演やテレビ出演も多く、読書、テニス、ダンスなど多趣味でした。国連UNHCR協会理事、日本・ロシア協会常任理事など、数多くの役職を歴任し、国際交流や文化振興に貢献しました。

受賞歴

1991年 スコットランドバーンズクラブより民間大使としての賞を受賞
1997年 社会文化功労賞受賞
1998年 湯川記念平和賞
2014年 アジア指導者大賞

著書

『これでいいのかニッポンの親―子どもが育つ世界の教え』（光文社、2001年）
『一途、ひたすら、精一杯』（講談社、2009年）：自叙伝
『ハローキティとモコちゃんの世界45ヵ国のありがとう』（講談社、2012年）
『どーもアリガトだよ―在日外国人32人の“渡る日本はいい人ばかりだった』（メタモル出版、2000年 稲川素子事務所編集）

稲川素子の生涯は、困難に立ち向かい、常に学び続けることの大切さを教えてくれます。彼女の情熱と行動力は、多くの人々に勇気を与え続けるでしょう。

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