稲川誠

稲川誠 - 元プロ野球選手の軌跡

稲川誠（いながわ まこと、1936年7月25日生まれ）は福岡県出身の元プロ野球選手であり、後にはコーチとしても知られる存在です。彼の野球人生は、戦後の混乱から始まり、数々の試練を経て華々しいキャリアへとつながりました。

幼少期と教育

稲川は満洲国新京で生を受け、幼少期を北京で過ごしていました。しかし、日本の敗戦により、彼の生活は激変しました。9歳の時に中国軍に追われ、天津の収容所に送られる苦難を経験します。病に伏し、生死をさまよう中で、父の背中越しに病人が横たわる光景を見続けたことは、彼の心に深く刻まれることになります。引き揚げ船に乗り、佐世保の地を踏んだ彼は、母から「あなたを置いていこうと思った」と告白され、帰国の難しさを改めて認識しました。

西南学院中学校での彼は、優れた投手の才能を持つとして地域での名声を得ます。1953年、修猷館高校に進学した彼は、音楽や自然にも関心を持ち、多様な趣味を楽しむ若者でした。高校卒業後は、立教大学に進学し、「立教三羽烏」と呼ばれる名選手たちの後輩となります。彼は野球部に入り、ブルペンでの活躍が認められ、打撃投手として活動を始めました。1959年に日本学生野球協会結成記念野球大会で好投し、主力投手として期待される一方で、背筋の痛みに苦しむことになりました。

プロ入りから現役時代

1960年、稲川は富士製鐵室蘭に入社し、その翌年、1962年には大洋ホエールズに入団します。彼の持ち味は切れのある速球と大小のカーブであり、入団早々から先発投手としての地位を確立しました。1963年には26勝を挙げ、球団の最多勝利記録を樹立しましたが、シーズン終盤に優勝争いが絡む中で悔しい結果を迎えました。1964年には再び21勝を記録し、特に阪神との競争では顕著な活躍を見せました。その後もオールスターゲームに3回出場し、5年間にわたり2桁勝利を達成するレスポンスを示しました。

稲川は1968年には二軍で11連勝を達成しましたが、一軍での出場が無かったため、同年に引退を決意します。

引退後のキャリア

現役引退後、稲川は大洋ホエールズ（後の横浜ベイスターズ）において二軍投手コーチ、一軍投手コーチ、さらにスカウトとして活動しました。若手選手の指導やスカウト業務を通じて、佐々木主浩や斎藤隆といったスター選手の育成に貢献しました。また、引退前には道内の選手指導を行い、地域の野球発展にも寄与しました。

趣味と個人的な側面

稲川は蝶の収集に情熱を持ち、専門家レベルの知識を有すると言われています。さらに、音楽やアウトドア活動にも興味をも持ち、ギターやウクレレの演奏も楽しんでいます。

結び

稲川誠はその投手としての才能だけでなく、引退後も長年にわたり野球界に貢献してきたことから、日本の野球史に名を刻む存在です。彼の努力と献身は、今後も多くの若手プレーヤーにインスピレーションを与え続けることでしょう。

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