稲葉橋

稲葉橋（いなばばし）

岐阜県加茂郡八百津町に位置する「稲葉橋（いなばばし）」は、中部地方を代表する河川の一つである木曽川に架設された、地域にとって重要な橋梁です。この橋は、単なる交通路としての機能だけでなく、その地理的な位置と役割において特筆すべき特徴を持っています。

兼山ダム湖に架かる構造物

稲葉橋の最も顕著な特徴は、それが兼山ダムによって形成された広大な人造湖、いわゆるダム湖の水面上に架けられている点にあります。ダム湖は、木曽川の流れを堰き止め、貯水することで治水や利水などの役割を担いますが、同時にその上流部には広大な水域が生まれます。稲葉橋は、この静かな水面を跨ぐように設計されており、一般的な河川に架かる橋とは異なる、独特の景観と構造的な要求に応える形で建設されました。湖面に映る橋の姿や、橋上から眺める湖の景色は、周辺の自然環境と調和しつつ、この橋独自の趣を醸し出しています。このようなダム湖上に橋を架けることは、基礎工法や耐水性など、通常の河川橋とは異なる技術的な考慮が必要とされます。

広域農道としての機能

本橋は、地域における重要なインフラである広域農道の一部として供用されています。広域農道は、農業地域における生産物の流通効率化や、地域間の連携強化を目的として整備される道路です。稲葉橋がこの広域農道の一部を担っていることは、単に人や車両が通行するためのルートであるに留まらず、八百津町を中心とした周辺地域の農業生産活動を支え、地域経済の活性化に寄与していることを意味します。農業機械や農産物を積んだ車両の通行、さらには地域住民の日常生活における移動手段として、多岐にわたる利用がなされています。

橋の諸元

稲葉橋は、以下の物理的な仕様を持っています。

供用開始：1981年（昭和56年）12月
延長：181.2メートル
* 幅員：9.8メートル

1981年に供用が開始されたこの橋は、完成から長い年月を経て、地域の交通網の一翼を担い続けています。延長約181メートルの長さは、兼山ダム湖のある程度の幅を渡るために必要な規模であり、幅員約10メートルは、車両の安全なすれ違いや、将来的な交通量の増加にも対応できる設計となっています。

結ぶ地域

この橋が結んでいるのは、岐阜県加茂郡八百津町内の二つの地域、すなわち野上（のがみ）地区と伊岐津志（いぎつし）地区です。木曽川と兼山ダム湖によって隔てられていたこれらの地域間を結ぶことで、住民の移動の利便性が向上し、地域内の交流が促進されました。野上地区から伊岐津志地区へ、またはその逆へのアクセスが容易になったことは、生活圏の拡大や、地域資源の活用にも繋がっています。

稲葉橋は、兼山ダム湖という特殊な環境に架かる構造物でありながら、広域農道としての実用的な役割を担い、八百津町内の重要な二つの地域を結ぶ生命線として、現在も多くの人々に利用されています。その存在は、地域の発展にとって不可欠な要素の一つと言えるでしょう。

もう一度検索