穂高川

穂高川：安曇野の急流と豊かな自然

長野県安曇野市を流れる穂高川は、信濃川水系に属する延長27.795kmの河川です。その源流は、安曇野市の北西に位置する燕岳にあります。上流部は地元では中房川と呼ばれ、中房温泉を流れ下ります。安曇野市穂高有明で乳川と合流し、正式に穂高川と名付けられます。その後、安曇野市穂高北穂高付近で烏川と合流、そして安曇野市明科中川手（御法田）にて犀川へと注ぎ込みます。

穂高川は、その地理的特徴から、非常に変化に富んだ河川です。流域の大部分は有明山などからなる花崗岩地帯で、河川勾配が急峻なため、急流を形成しています。この急流によって生じる浸食作用は、深いV字谷を作り出しており、その景観は見るものを圧倒します。

特に犀川との合流地点付近は、扇状地の末端にあたり、至る所から湧水が噴出しています。この湧水は、ワサビ栽培に最適な環境を作り出しており、穂高川流域は日本有数のワサビの産地として知られています。清冽な水と豊かな自然が育むワサビは、地元の特産品として高い評価を得ています。

歴史的な側面にも目を向けると、穂高川は人々の生活と深く関わってきたことが分かります。流域には、日本の抒情歌として有名な「早春賦」の歌碑が建立されています。この歌碑は、穂高川の美しい自然と、そこで営まれる人々の生活を象徴する存在と言えるでしょう。

しかし、穂高川の恵みは、災害という形で人々に試練を与えることもあります。1953年（昭和28年）9月25日、昭和28年台風第13号による集中豪雨により、北穂高村内（現在の安曇野市の一部）で堤防が決壊する甚大な被害が発生しました。同日、高瀬川の堤防も決壊し、村内約100戸が水没するなど、地域社会に大きな爪痕を残しました。この災害は、自然の力の脅威を改めて認識させ、河川管理の重要性を浮き彫りにしました。

一方、穂高川の急流という特性は、水力発電という恵みをもたらしています。特に中房川（上流部）は、比較的小さな支流しかなく、水が本流に集中しやすいという特徴があります。加えて、河川全体が急勾配であるため、水量の割合に対して大きな落差を利用した連続発電が可能となっています。そのため、中房川流域には多くの水力発電所が建設され、地域の発展に貢献しています。

穂高川の支流としては、合戦沢、中川谷、糠川谷、冷沢、黒川沢、乳川、烏川などが挙げられます。これらの支流は、それぞれ独自の地形や生態系を有し、穂高川流域の豊かな自然を支えています。

このように、穂高川は急流による浸食地形、湧水によるワサビ栽培、歴史的な歌碑、水力発電、そして災害の歴史など、多様な側面を持つ河川です。安曇野市の自然と文化を理解する上で、欠かせない存在と言えるでしょう。

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