積算士

イギリスと日本の積算士：役割、資格、そして現状

建築プロジェクトの成功には、綿密な計画とコスト管理が不可欠です。特にイギリスでは、設計、見積もり、施工がそれぞれ独立した専門家によって行われるのが一般的です。その中で、建築積算を専門とする積算士（Quantity Surveyor）は、アーキテクトと並ぶ重要な役割を担っています。

イギリスの積算士：建築プロジェクトの中核

イギリスには現在、約75,000人の積算士が活躍しています。彼らは、建築プロジェクトのライフサイクル全体を通して、コスト管理、見積もり、契約交渉など、多岐にわたる業務を担います。

イギリスで建物を新築または改築する際には、まずアーキテクトに設計を依頼し、次に積算士に見積もりを作成してもらいます。その後、建築施工会社に工事を依頼するという流れが一般的です。これは、イギリスの建築文化が深く関わっています。イギリスでは、古い建物ほど価値があるとされ、築100年を超える歴史ある建物に住むことがステータスと見なされる傾向があるため、改築工事も大規模なものになることが多いのです。

積算士は、見積額が予算を超えた場合、アーキテクトと協力して設計内容を調整したり、建築業者との交渉を調整したりする役割も担います。そのため、積算士の存在は、プロジェクトの円滑な進行に不可欠と言えるでしょう。

積算士の能力は、プロジェクトの成功に直結します。設計者は理論的な側面に精通していることが多い一方で、積算士は実践的な知識や経験を豊富に持ち、アーキテクトを補佐する役割も担います。多くの場合、仕様は予算に合わせて積算士によって決定されます。

イギリスの積算士の起源は、18世紀のサーベイヤーという職業に遡ります。彼らは、建物の建設後、価値を評価し、クライアントと建築家の交渉を仲介していました。19世紀初頭には、請負業者制度の導入に伴い、施工前に価格競争が行われるようになり、積算士は図面からの数量測定技術を開発。コスト見積もり、予測、コスト管理など、建設プロジェクトにおける財務管理プロセスにおいて重要な役割を果たすようになりました。現代では、建設技術の進化、環境問題への意識の高まり、非伝統的な調達方法の台頭などにより、積算士の役割はさらに進化を続けています。

積算士が提供するサービスは多岐に渡り、コストコンサルティング、コスト見積もり、コスト管理、コストエンジニアリング、リスク管理、契約交渉、紛争解決支援など、プロジェクトのあらゆる段階をサポートします。

日本の積算士：現状と課題

日本においては、公益社団法人日本建築積算協会が「建築積算士」という民間資格を発行しています。しかし、日本の建築業界では、見積もりが設計者または施工者の業務に含まれることが一般的であり、積算士の登録者数は、1級建築士と比較して圧倒的に少ないのが現状です。

そのため、積算士の職能と資格の普及、知名度向上は大きな課題となっています。また、資格取得にかかる費用や登録更新の手続きなどの問題点も指摘されています。

日本[建築]]積算協会は、イギリスのQuantity Surveyorに相当する資格として「建築コスト管理士」も創設しています。この資格は、一定の要件を満たすと[[英国王立勅許鑑定士協会]の正会員となり、「Chartered Quantity Surveyor」の称号を取得できますが、これも普及、知名度向上には課題が残されています。

まとめ

イギリスと日本の積算士は、それぞれ独自の制度と役割を担っています。イギリスでは、建築プロジェクトにおいて不可欠な専門職として確立されていますが、日本ではまだその認知度、普及度は低いのが現状です。日本の積算士の役割拡大、資格制度の改善、そして社会全体における認知度向上のためには、更なる努力が必要でしょう。

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