穢多寺

穢多寺とは

穢多寺（えたでら）は、日本において被差別部落の住民を主な信者とする寺院を指します。別名として、穢寺（えじ）や皮田寺（かわたでら）とも呼ばれることがあります。これらの寺院は、一般的には被差別部落の地域内に設立されることが多いですが、時には部落の外に位置することもあります。特に西日本の地域において多数が建てられ、その多くは浄土真宗に属しています。

穢多寺の歴史的背景

穢多寺の起源は主に中世の終わりから近世の初頭にかけて見られます。この時期には、地域の特性や社会状況によって形成された独自の宗教的コミュニティが存在し、彼らの生活に密着した慣習が根付いていました。穢多寺やそこで活動する僧侶は、浄土真宗の中でも特異な位置を占めており、特に部落民としての背景から差別を受けることがしばしばありました。

宗教と社会的立場

穢多寺は、その信者が社会的に marginalized（周縁化）された存在であるため、寺院そのものも社会の中で特別な位置づけを持つようになりました。このような状況下、穢多寺は信者にとっての心の支えであり、また、地域社会の中で重要な役割を果たしてきたとされています。

寺院内では、宗教行事や祭りが行われ、信者同士の結束を深める場である一方で、外部からは偏見や差別の対象とされることも多く、穢多寺の僧侶たちもまた、自己の宗教的信念と社会的偏見との間で苦悩し続けることとなります。

社会的変革と現在

時代が進むにつれ、穢多寺やその信者たちが受けていた差別に対する意識も少しずつ変化していきました。特に、近代以降の社会運動や人権意識の高まりにより、穢多寺の存在は単なる宗教施設としての役割のみならず、人権問題や社会的な平等の象徴的存在としても認識されるようになりました。

例えば、富田本照寺のように穢多寺を多く抱える寺院が"えた寺の中本山"といわれ、地域の共同体からの支援を受けている例もあります。これにより、穢多寺は単に信仰の場であると同時に、差別問題の解決にも寄与する重要な存在としての役割を持ち始めています。

一方で、過去の差別や偏見の影響は今なお完全には解消されておらず、地域社会における理解や支援の必要性は依然として存在します。このように、穢多寺の歴史は日本の社会的な課題や地域コミュニティの形成と密接に関係していると言えるでしょう。なお、以下に関連参考文献も挙げますので、興味がある方は是非ご覧ください。

• - 原田伴彦『宗教と部落問題』難波別院、1982年。
• - 小林茂・芳賀登・三浦圭一・森杉夫・脇田修 編『部落史用語辞典』柏書房、1985年。

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