芳賀登

芳賀登

芳賀登（はが のぼる、1926年7月30日 - 2012年2月26日）は、昭和から平成にかけて活躍した日本の日本史学者です。特に幕末の国学研究において多大な功績を残し、筑波大学名誉教授、東京家政学院大学教授・理事長を歴任しました。その研究は、単なる歴史的事実の羅列に留まらず、社会構造や人々の精神性にまで深く切り込むものであり、多くの人々に影響を与えました。

生涯

愛知県豊橋市に生まれた芳賀登は、1951年に東京文理科大学史学科を卒業後、高校教師を経て大阪教育大学に赴任しました。その後、東京教育大学の廃止と筑波大学の設立に伴い、筑波大学教授に就任。東京教育大学日本史教室の教員が、大学廃止に反対して筑波大学への移籍を拒否する中、井上辰雄、田沼睦、岩崎宏之、大濱徹也らを招聘し、筑波大学における日本史研究の基盤を築きました。筑波大学では副学長も務め、1990年に定年を2年残して退官。その後は、東京家政学院大学教授、理事長として教鞭を執りました。また、日本風俗史学会会長としても学会の発展に尽力しました。

2009年4月には、長年の学術研究に対する貢献が認められ、旭日中綬章を受章しました。2012年2月26日、85歳で生涯を閉じました。

業績

芳賀登は、幕末の国学を専門としていましたが、その研究範囲は非常に広く、政治史、社会史、思想史、文化史など、多岐にわたる分野で優れた業績を残しました。特に、民衆史の視点を取り入れた研究は、当時の歴史学界において革新的であり、多くの研究者に影響を与えました。

著作も多数あり、『幕末国学の展開』、『本居宣長』、『幕末志士の生活』、『明治維新の精神構造』など、数多くの著書を出版しています。これらの著書は、専門家だけでなく、一般読者にも広く読まれ、歴史への関心を深めるきっかけとなりました。著作選集も全8巻刊行されており、その研究の幅広さと深さを窺い知ることができます。

研究の特徴

芳賀登の研究の特徴は、以下の点が挙げられます。

民衆史の重視: 従来の歴史研究が、政治や戦争など、一部の権力者やエリート層に焦点を当てていたのに対し、芳賀登は、名もなき庶民の生活や文化、思想に光を当てました。これにより、歴史をより多角的に捉えることが可能になりました。
風俗史の視点: 人々の服装、食生活、住居、祭りなど、日常生活における風俗習慣を通じて、社会の変化や人々の意識を探求しました。これにより、歴史に人間味とリアリティを与えることに成功しました。
* 思想史との融合: 思想史研究においては、単なる思想の紹介に留まらず、その思想が生まれた背景や、社会に与えた影響などを詳細に分析しました。これにより、思想と社会の相互作用を明らかにし、歴史の理解を深めました。

芳賀登の研究は、日本の歴史学界に大きな足跡を残し、今もなお多くの研究者に影響を与え続けています。彼の著作は、歴史を学ぶすべての人にとって、貴重な財産と言えるでしょう。

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