空 (アルバム)

『空』：長渕剛の等身大が凝縮された魂の叫び

2001年6月27日、長渕剛の18枚目のオリジナルアルバム『空』がフォーライフ・レコードよりリリースされました。前作『SAMURAI』から約2年8ヶ月ぶりのリリースとなる本作は、長渕剛自身による作詞・作曲、そして彼と瀬尾一三氏による共同プロデュースという体制で制作されました。

特徴的なのは、1993年の『Captain of the Ship』以来となる日本国外でのレコーディングです。ロサンゼルスでのレコーディングによって生み出されたサウンドは、アルバム全体に独特の深みと広がりを与えています。収録されている楽曲の多くは、長渕剛の日常や心情を赤裸々に綴ったドキュメンタリー性の高い作品です。特に、前年に亡くなった母親をしのぶ楽曲の存在は、アルバム全体のトーンに大きな影響を与えています。

アルバム全体としては、穏やかな曲調の楽曲が多い点が印象的です。しかし、その穏やかさの裏には、長渕剛の揺るぎない情熱が感じられます。それは、彼の内面における葛藤や、人生に対する強い意志の表れと言えるでしょう。先行シングルはリリースされておらず、アルバムと同日にシングル「空/SORA|空_SORA」が発売されました。オリコンチャートでは最高位5位を記録するなど、商業的にも成功を収めています。

アルバム制作の背景：肉体改造と喪失の経験

『空』の制作背景には、長渕剛の肉体改造と、母親の死という二つの大きな出来事が深く関わっています。1999年12月には『ACOUSTIC 俺の太陽』をリリースした後、2000年にはライブイベント「LIVE ONLY 2X2 -an unplugged-」を開催し、ライブビデオもリリースしています。しかし、2000年8月、長渕剛の母親が急逝。この出来事は、彼の音楽活動に大きな影響を与えました。

同時に、長渕剛は長年のコンプレックスであった痩せ気味の体格を改善しようと、肉体改造を決意します。幼少期の憧れであった重量挙げ選手、マラソンランナー、俳優の影響を受け、トレーニングジム「サンプレイ」で過酷なトレーニングを開始します。そこでの経験は、彼の精神と肉体を鍛え上げ、楽曲にも反映されています。

音楽性：等身大の表現と情熱

音楽評論家からは、本作における長渕剛の音楽性が様々な角度から評価されています。例えば、藤井徹貫氏は、楽曲に表現されたドキュメンタリー性と、そこに内包された長渕自身の姿に注目。「コオロギの唄」、「少年よ、君は強くなる」、「ごめん」などを通して、自身の内面を映し出す鏡のような存在として楽曲を捉えています。

五井健太郎氏は、「10年前の帽子」の浮遊感のある曲調と歌詞、「コオロギの唄」のレクイエムとしての側面、「勇気の花」や「すっからぴんのからっけつ」に見られる闘う姿勢などを高く評価。穏やかな曲調の中に、決して失われていない情熱を確認しています。これらの評価は、『空』が、長渕剛の等身大の姿と、揺るぎない音楽的信念を融合させた作品であることを示しています。

リリースとプロモーション：CDのみのリリースと積極的なメディア展開

『空』は2001年6月27日にCDのみでリリースされました。これは、それまでのカセットテープとの同時リリースから変更された点です。同日にはシングル「空/SORA|空_SORA」もリリースされ、精力的なプロモーション活動が行われました。

テレビ出演では、『HEY!HEY!HEY! MUSIC CHAMP』、『ミュージックフェア2001』、『SMAP×SMAP』などの人気番組に出演。「空/SORA|空_SORA」をはじめとする複数の楽曲を披露し、話題を集めました。「空/SORA|空_SORA」のみミュージックビデオが制作されました。

アートワークとツアー：肉体美と圧倒的なライブパフォーマンス

アルバムジャケットでは、鍛え上げられた長渕剛の肉体が大胆に披露されています。金髪に染めた髪型も相まって、彼の新しいイメージを強烈に印象付けました。ライナーノーツは、『ACOUSTIC 俺の太陽』に引き続き、本作でも省略されています。

アルバムリリース後には、「LIVE 2001 空/SORA|空_SORA」と題したコンサートツアーが開催され、全国21都市27公演が行われました。さらに翌年にはアリーナツアーも行われ、その模様はライブビデオ『JAPAN TOUR LIVE 2001-2002 "空/SORA|空_SORA"』としてリリースされました。

批評：高い評価と傑作との呼び声

音楽情報サイト『BARKS』や『CDジャーナル』では、本作は肯定的な評価を受けています。『BARKS』は、叫ぶような従来の長渕節から、達観したような呟きへと変化した点を高く評価。『CDジャーナル』は、エネルギッシュでストレートな歌詞を称賛しました。

文芸雑誌『別冊カドカワ 総力特集 長渕剛』と『文藝別冊 長渕剛 民衆の怒りと祈りの歌』掲載の評論でも、長渕剛のソングライターとしての底力、楽曲のクオリティの高さが賞賛されています。ファンの間では、最高傑作と評されることも少なくないようです。

チャート成績と収録曲：商業的成功と多様な楽曲群

オリコンチャートでは最高5位、登場回数8回、約23万枚の売上を記録しました。収録曲は、「勇気の花」、「すっからぴんのからっけつ」、「コオロギの唄」、「空/SORA|空_SORA」など多岐に渡り、それぞれに長渕剛の心情や人生観が深く反映されています。中には、母親の死や、恋人の誕生日に関する珍しいコミカルな曲も含まれています。

スタッフ・クレジット：豪華な制作陣と協調性

アルバム制作には、数多くのミュージシャン、エンジニア、スタッフが関わっています。海外ミュージシャンとのコラボレーションも特徴的で、国際的な制作体制が本作のクオリティを支えています。

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