空の大怪獣 ラドン

映画『空の大怪獣 ラドン』の概要

『空の大怪獣 ラドン』（そらのだいかいじゅう ラドン）は、1956年12月26日に公開された東宝の特撮怪獣映画です。この作品は初のカラー東宝怪獣映画であり、正月向けとしての特撮作品として特に注目されました。

本映画のキャッチコピーは「空飛ぶ戦艦か！ 火口より生れ地球を蹂躙する紅蓮の怪鳥ラドン！」です。公開当初は、『眠狂四郎無頼控』とともに新宿コマ東宝のこけら落とし上映作品としても知られています。

内容の特徴

『空の大怪獣 ラドン』は、54年にリリースされた『ゴジラ』からインスピレーションを受けた作品であり、核の象徴であったゴジラとは異なり、ラドンはより動物的な特徴が強調されています。映画の前半は、炭鉱での陰惨な事件を追うミステリー要素が強調され、後半には超音速で飛行するラドンの姿が描かれています。

物語は、炭鉱技師の河村繁が阿蘇近郊で勤務しているところから始まります。炭鉱内での人的混乱や怪奇な事件が続発し、行方不明の炭鉱夫や不気味な生物が現れるというじわじわとした緊張感が漂うストーリー展開が特徴です。一方で、ラドンの登場は後半に集中し、観客は前半の緊迫感から一転して破壊的な展開へと引き込まれます。

映画の影響

ラドンが破壊する西海橋は公開された年に完成したばかりのもので、以後の怪獣映画における新たなロケ地として観光客を呼び込みました。ラドンによって壊される岩田屋のデパートのロゴは、ラドンからインスパイアを受けたものとして話題となり、映画がもたらした意義が実在のビジネスや観光業にも影響を与えたことが注目されます。これにより「怪獣に壊される建物」が逆に「有名になる」という新たなトレンドとなりました。

また、1976年には名作シリーズとして『ゴジラ』『モスラ』とともに再上映され、2022年の特集上映ではデジタルリマスター版が公開されました。

製作の背景

本作品は、1954年の『ゴジラ』の成功を受けて制作されました。製作の田中友幸によると、超音速ジェット機の話題が制作の動機となり、「ゴジラを超音速で飛ばす」という斬新なアイデアが生まれたとされています。この映画の制作過程では、特撮の技術に長けた円谷英二が重要な役割を果たし、特撮技術の新たな地平を開くことに貢献しました。

音楽と特撮技術

音楽は、伊福部昭によって作曲され、ラドンの飛翔感を表現するために金管楽器が多用されています。特撮技術においては、特にラドンの表現が革新され、ピアノ線で吊り下げられたラドンが空中を飛行する様子が描かれました。この手法は、当時の特撮映画において革命的な試みであり、後の作品にも多大な影響を与えました。

総括

『空の大怪獣 ラドン』は、特撮映画の金字塔として位置づけられており、その影響は今日に至るまで続いています。この映画は、単なる怪獣映画にとどまらず、社会的な現象としても評価される重要な作品です。

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