空中発射弾道ミサイル

空中発射弾道ミサイル：航空機から発射される弾道ミサイルの開発と現状

空中発射弾道ミサイル（ALBM）とは、航空機に搭載され、空中から発射される弾道ミサイルです。地上や艦艇から発射されるミサイルと異なり、発射位置を特定しにくいことから、高い生存性を持つと期待されてきました。しかし、航空機の搭載能力や作戦行動時間の制約から、ALBMの開発は容易ではありません。

アメリカ合衆国におけるALBM開発

ALBMの開発において最も有名な例は、アメリカ空軍が開発したスカイボルトです。冷戦期、核戦力の重要な一部として開発が始まりましたが、高コストが原因で1962年に計画は中止されました。この計画の中止は、イギリスの核戦力にも大きな影響を与えました。イギリスは既に、コスト高を理由にブルーストリーク中距離弾道ミサイル（IRBM）とブルースチールMk.II空中発射巡航ミサイルの開発計画を中止しており、スカイボルトの開発中止によって核戦力の空白が生じる事態となりました。この問題は、アメリカからポラリス潜水艦発射弾道ミサイルを導入することで解決されました。

その後もアメリカではALBMの研究が続けられ、1974年にはミニットマンI大陸間弾道ミサイルをC-5輸送機から空中発射する試験が行われました。この試験では、パラシュートを使ってミサイルを機体から投下し、空中で姿勢制御した後、発射するという方法が試されました。ピースキーパーICBMでも同様の空中投下・発射方式が検討されましたが、いずれも実用化には至りませんでした。

攻撃兵器としては実用化に至らなかったALBMですが、現在ではミサイル防衛システムにおいて重要な役割を担っています。アメリカでは、弾道弾迎撃ミサイルのテスト用に、空中発射型の弾道ミサイル標的（eMRBMやE-LRALTなど）が使用されています。これらの標的は、ALBMの技術を応用して開発されており、ミサイル防衛システムの性能向上に貢献しています。

ロシアの新型ALBM：Kh-47M2 キンジャール

2019年現在、ロシアは新型ALBMであるKh-47M2 キンジャールを開発しています。これはMiG-31迎撃戦闘機から発射され、マッハ10の速度と2000kmの射程を持つと発表されています。陸上および海上目標への攻撃能力を有しており、ロシア軍の攻撃能力を大幅に向上させるものと期待されています。

ALBMの課題と将来展望

ALBMは、高い生存性と迅速な攻撃能力を有する潜在的な兵器ですが、航空機の搭載能力や作戦行動時間の制約、そして高コストといった課題があります。そのため、これまで実戦配備された例は少ないです。しかし、ミサイル防衛システムの高度化や、新たな技術開発によって、ALBMの開発や運用が再び注目される可能性があります。特に、長射程化や多弾頭化などの技術開発が進めば、ALBMは将来の戦争において重要な役割を果たす可能性があります。

まとめ

ALBMは、その高い生存性と迅速な攻撃能力から、冷戦期より各国で研究開発が進められてきました。しかし、技術的課題やコスト面の問題から実用化は限定的です。近年では、ミサイル防衛システムの試験用として利用されているほか、ロシアが新型ALBMを開発するなど、その技術開発は継続しています。今後の技術革新によって、ALBMは新たな局面を迎える可能性があります。

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