Kh-47M2 キンジャール

Kh-47M2 キンジャール（Kinzhal）とは

Kh-47M2 キンジャール（ロシア語: Х-47М2 «Кинжал»）は、「短剣」を意味するロシアの極超音速空対地ミサイルです。NATOコードネームはAS-24「キルジョイ」（Killjoy）として知られています。

概要

当初、その性能は射程2,000km以上、最大速度マッハ10と発表され、全段階での回避運動能力を持つとされていました。核弾頭の搭載も可能です。Tu-22M3爆撃機またはMiG-31K戦闘機に搭載される空中発射弾道ミサイル（ALBM）として運用されます。

2017年12月に就役し、現在はロシア連邦軍の南部軍管区と西部軍管区の空軍基地に配備されています。2018年3月1日、ウラジーミル・プーチン大統領による年次教書演説で、新型大陸間弾道ミサイル（RS-28）や原子力推進巡航ミサイル「9M730」と共に、6つの戦略核兵器の一つとして発表されました。

イギリス国防省は、キンジャールを「イスカンデルの空中発射型」と評価しており、その射程距離には疑問も呈されています。タス通信によれば、射程2,000kmは母機MiG-31Kの戦闘半径を含めたものであり、Tu-22M3であれば3,000kmとされています。ただし、空中給油により作戦母機の戦闘半径は延長可能です。飛翔体単体の射程は非公表です。

配備と実戦投入

2017年12月1日、キンジャール装備型に改造されたMiG-31Kが運用実験を開始しました。2018年5月には、改造された10機のMiG-31Kが模擬戦闘任務に就き、実戦配備の準備が完了。同月9日の大祖国戦争戦勝記念日パレードでは、本装備を搭載したMiG-31Kがデモンストレーション飛行を実施しました。同年12月までに、黒海およびカスピ海周辺で延べ89回の訓練出撃が行われました。

2019年2月までに、MiG-31Kの乗組員はミサイルを装備して380回以上の訓練出撃を実施し、そのうち少なくとも70回は空中給油を行いました。同年8月のアヴィアダーツ国際競技大会にも本装備搭載のMiG-31Kが参加しています。

イタルタス通信によると、2019年11月中旬には、北極圏でキンジャールの最初の発射実験がMiG-31Kによって行われ、オレニヤ空軍基地から発射されたミサイルは、ハルミェール＝ユーの試験場に設置された地上目標に命中し、飛行速度はマッハ10に達したと伝えられています。

2021年6月には、ロシア連邦航空宇宙軍がシリア空爆の拠点とするフメイミム空軍基地から発進したMiG-31Kによって、キンジャールがシリアの地上目標に向けて発射されました。同年には、キンジャールを搭載したMiG-31Kを装備する別の航空連隊が編成されています。

2022年8月18日、ロシア国防省は、ロシア最西端の飛び地領土であるカリーニングラード州にキンジャールを装備したMiG-31を3機配備したと発表しました。

ロシアのウクライナ侵攻

2022年3月18日、ロシア連邦軍はウクライナ西部のイヴァーノ＝フランキーウシク州デリアティンの地下兵器庫を破壊するためにキンジャールを使用しました。

2023年3月9日、ロシア国防省のイゴール・コナシェンコフ報道官は、「キンジャールを含む兵器が、ウクライナの軍事インフラの重要な部分を直撃した」と説明しました。ウクライナ軍のヴァレリー・ザルジニー総司令官は、同日に侵攻史上最大の6発が発射されたと発表しています。

2023年5月4日、ウクライナのニュースサイトDefence Expressは、撃墜されたとされるミサイルの残骸写真などを根拠に、キンジャールがキエフ上空で撃墜された可能性があると報じましたが、ウクライナ空軍はこれを否定しました。

5月9日、アメリカ国防総省は、ウクライナがパトリオットミサイル防衛システムを使用してロシアのミサイルを撃墜したことを確認しましたが、それがキンジャールであったかどうかは明言しませんでした。ロシアメディアは、キンジャールとイスカンデル-Mの設計に共通点が多いことから、ウクライナ軍が過去に迎撃したイスカンデルの破片を用いてキンジャール撃墜を偽装している可能性を主張しました。

Kh-47M2 キンジャール