窪田畔夫

窪田畔夫（くぼた くろお）

窪田畔夫は、1838年（天保9年）に信濃国筑摩郡和田村（現在の長野県松本市和田）に生まれ、1921年（大正10年）にその生涯を閉じました。本名を窪田重国といい、松門という号も持っていました。彼は、政治家としての顔だけでなく、教育者としても地域社会に貢献した人物です。

教育者としての側面

青年期から寺子屋を開き、地域の子どもたちの教育に尽力しました。1872年には、開智学校の前身となる筑摩県学の開設を推進するなど、教育の発展に大きく貢献しました。

自由民権運動への参加

市川量造らとともに『信飛新聞』を創刊し、後に『松本新聞』と改題したこの新聞で、自由民権運動の論陣を張りました。言論の力で社会変革を目指した彼の姿勢は、当時の人々に大きな影響を与えたと考えられます。

政治家としての活動

1879年には北安曇郡の初代郡長に就任し、1883年には渡辺敏らとともに白馬岳に初登頂するという業績も残しました。その後、1888年には長野県会議員、1892年には帝国議会衆議院議員に選出されました。衆議院議員選挙には第1回から出馬しましたが、初めは次点に終わり、第2回でトップ当選を果たしました。しかし、その後の第3回、第4回では落選し、政治の世界での苦難も経験しました。

政界引退と晩年

長男に先立たれたことをきっかけに政界を引退し、晩年は各地の神社の宮司として静かに過ごしました。教育、言論、政治と多岐にわたる分野で活躍した彼の人生は、波瀾万丈であったと言えるでしょう。

松門文庫

畔夫の次男である二木洵は、蚕種業者として成功した後、父の業績を顕彰するため、1919年に浅間温泉に松門文庫を建設しました。この文庫は擬洋風、あるいは和洋折衷様式の建物で、父の蔵書を一般に公開していました。しかし、現在は非公開となっており、二木家が所有しています。近年、その保存と活用を巡り、松本市議会や地元の民間団体などが議論を重ねており、建設から百年を経て、再び注目を集めています。


窪田畔夫は、教育者、ジャーナリスト、政治家として、激動の明治時代を力強く生きた人物であり、その功績は今もなお語り継がれています。

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