竹の台陳列館

竹の台陳列館：近代日本美術史を彩った上野公園の施設

竹の台陳列館は、東京都台東区上野公園（当時、下谷区）に存在した、明治末期から大正期にかけて日本の近代美術を支えた重要な施設です。現在東京国立博物館があるエリアの南側、噴水と奏楽堂の中間あたりに位置していました。

東京帝室博物館と美術展

この陳列館は、東京帝室博物館（現在の東京国立博物館）が管理運営し、文部省美術展覧会（文展）を始めとする様々な美術展に貸し出されていました。当時の美術団体にとって、なくてはならない存在だったと言えるでしょう。多くの著名な美術家たちが、ここで作品を発表したのです。

始まりは博覧会用施設

陳列館の歴史は、明治後期の第五号館に遡ります。これは、1889年の第3回内国勧業博覧会の施設を農商務省から帝国博物館が引き継いだものです。その後、1907年の東京勧業博覧会開催に伴い取り壊され、跡地に建てられたのが、現在の竹の台陳列館です。木造平屋建てで、広さは1248坪にも及ぶ大きな建物でした。

1914年の東京大正博覧会では、屋根の改修や入り口に装飾が施され、「第三工業館」として使用されました。しかし、元々は博覧会用の建物だったため、土間だけの簡素な構造で、雨漏りなどの問題を抱えていました。このため、美術家たちからは、より適切な施設の必要性が訴えられ、国立美術館建設運動へと発展していったのです。

東京府美術館開館とその後

この運動を経て、上野公園の近接地に東京府美術館（現在の東京都美術館とは異なる）が建設されることになり、1925年の開館によって、竹の台陳列館は役割を終えました。翌1926年には文部省に移管され、移築・改修の上、1927年に東京博物館上野別館として再出発を果たします。約840坪の建物で、様々な展覧会や資料展示に使用されました。隣接地に新しい上野新館（現在の国立科学博物館本館）が建設された後も、別館として活躍を続けたのです。

戦災と消滅

しかし、第二次世界大戦末期の1945年、空襲の危険から建物疎開の対象となり、軍隊によって北側部分が破壊されてしまいました。職員が立ち会う間もなく、館内に保管されていた貴重な標本類も多数失われたと言われています。終戦後も約200坪の建物が残っていましたが、放置されたまま1949年に自然倒壊し、竹の台陳列館は完全に姿を消しました。

まとめ

竹の台陳列館は、近代日本の美術発展に大きく貢献した施設でした。その存在は、多くの美術家や作品、そして日本の美術史に深く刻み込まれています。現在では建物は残っていませんが、その歴史は、日本の美術史において重要な一章として記憶されています。

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