竹内常一

教育学者として知られる竹内常一（たけうち つねかず）氏は、1935年1月13日に生を受け、2020年9月1日に85歳でその生涯を閉じた。國學院大学名誉教授として、特に生活指導論、青年期教育論、そして文学教育論といった分野で顕著な業績を残した。

大阪府で生まれた竹内氏は、東京大学大学院教育学研究科の修士課程を修了し、教育学の研究者としての道を歩み始めた。長年にわたり國學院大学文学部で教鞭を執り、多くの学生を指導した。2005年3月に同大学を退職し、名誉教授の称号を得ている。

竹内氏の活動は大学における教育・研究に留まらなかった。彼は、日本の教育現場、特に学校における生活指導のあり方を深く追求する民間教育研究団体において、中心的な理論的指導者の一人として活躍した。「全国生活指導研究協議会」（全生研）や「高校生活指導研究協議会」（高生研）といった団体を通じて、現場の教師たちと共に、子どもや青年の発達、学校における集団のあり方、非行問題、そして教育の民主化といった多岐にわたる課題に取り組んだ。彼の理論は、これらの団体の活動方針や研究内容に大きな影響を与え、多くの教師にとって実践の指針となった。

竹内氏の研究テーマは、一貫して子どもや青年の成長、そして彼らを取り巻く学校や社会の環境にあった。その思想は多数の著作として結実しており、教育界に広く影響を与えた。初期の代表作である『生活指導の理論』（1969年）は、この分野における理論的基盤を確立する上で重要な役割を果たした。また、『子どもの自分くずしと自分つくり』（1987年）では、子どもの内面的な発達プロセスに光を当てた。学校教育の現状や未来についても積極的に発言し、『いま、学校になにが問われているか』（1992年）や『日本の学校のゆくえ』（1993年）などを発表、偏差値教育や学校の自治といった問題を提起した。晩年においても、『新・生活指導の理論 ケアと自治 :学びと参加』（2016年）を著し、現代社会における生活指導のあり方を探求し続けた。これらの単著に加え、多数の共編著や翻訳も手掛けており、その活動の幅広さを示している。特に、共編著には現場の教師との共同作業や、異なる専門分野の研究者との対話の成果が多く含まれている。彼の教育思想の集大成ともいえる「竹内常一教育のしごと」全5巻も刊行されている。

2020年9月1日、老衰のため85歳で死去した竹内常一氏。彼の教育学への貢献、特に生活指導論や青年期教育論における理論的深化と、民間教育研究団体を通じた実践への影響は計り知れない。子どもの権利や自己形成、学校における学びと参加、そして社会との関わりといったテーマを生涯にわたり探究し続けたその業績は、今日の教育を考える上でも重要な示唆を与え続けている。

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