竹内敏信

竹内敏信：風景写真に捧げた生涯

竹内敏信（たけうち としのぶ）は、昭和18年（1943年）6月21日に愛知県額田郡宮崎村（現・岡崎市）で生まれ、令和4年（2022年）2月27日に78歳で生涯を閉じた日本の著名な写真家です。彼は、風景写真家としての地位を確立するだけでなく、日本写真芸術専門学校の校長を務め、後進の育成にも尽力しました。また、日本写真家協会の名誉会員であり、一般財団法人竹内敏信記念財団の名誉理事、TAギャラリーの館長としても活動しました。

写真との出会いと初期の活動

竹内が写真に興味を持ったのは中学2年生の時でした。姉が欲しがっていたカメラを勧めたことがきっかけで、自身も新聞配達のアルバイトで資金を貯めてカメラを購入しました。家業を継ぐために愛知県立岡崎工業高等学校土木科に進学しましたが、高校時代から写真雑誌への投稿を始め、その才能を発揮し始めました。

名城大学理工学部在学中の1962年（昭和37年）には、富士フイルムの全国学生コンクールで銀賞を受賞。しかし、大学卒業後の1966年（昭和41年）に愛知県庁に入庁し、砂防課などの土木畑に勤務する中で、「まず開発ありき」の行政の姿勢に疑問を感じるようになります。次第に環境や人権問題に関心を抱き、写真を通じて社会に訴える「グラフジャーナリズム」の世界に惹かれ、汚染された伊勢湾の撮影をライフワークとしました。

風景写真家への転身

1972年（昭和47年）に県庁を退職し、伊勢湾の写真をまとめた「汚染海域」が総合雑誌『世界』で特集され、注目を集めました。1976年（昭和51年）には現代写真研究所の講師に就任し、東京に拠点を移します。しかし、「破壊された風景で保護を訴えても意味がない」と考えるようになり、1979年（昭和54年）頃から35mmカメラによる風景写真の撮影に転向。日本の原風景や四季折々の美しい風景を捉え、独自の視点で自然の生命力を表現しました。また、重要無形民俗文化財である愛知県北設楽郡の花祭の撮影にも没頭し、日本の伝統文化の記録にも貢献しました。

1984年（昭和59年）にキヤノンカレンダー『天地聲聞』を発表した頃から、日本を代表する風景写真家として広く認知されるようになりました。

病との闘いと晩年

1994年（平成6年）にクモ膜下出血で倒れるも奇跡的に生還。その後も精力的に活動を続けましたが、2007年（平成19年）に脳内出血で倒れ、右半身不随となりました。しかし、車椅子に乗って撮影を続けるという不屈の精神を見せ、多くの人々に感動を与えました。

2010年（平成22年）には日本写真芸術専門学校の校長に就任し、後進の育成に力を注ぎました。2017年（平成29年）には、自身のコレクションであるカメラやレンズなど約1,800点を名古屋学芸大学に寄贈。2018年（平成30年）には、岡崎市美術館で個展を開催し、写真パネル1,760点を郷里の岡崎市に寄贈しました。

2021年（令和3年）には、一般財団法人竹内敏信記念財団を設立し、写真文化の振興に貢献しました。

竹内敏信は、その生涯を通じて日本の風景の美しさを写真に収め、多くの人々に自然の素晴らしさを伝えました。彼の作品は、日本の風景写真の歴史に深く刻まれ、後世に受け継がれていくことでしょう。

もう一度検索