竹内浩三

竹内浩三：戦火に散った魂の詩人

竹内浩三（1921年5月12日 - 1945年4月9日）は、三重県伊勢市出身の詩人です。若くして戦死した彼の詩は、戦時下の青年の繊細な感情と、戦争への痛烈な批判を鮮やかに描き出しています。

生涯

竹内浩三は、裕福な呉服商の家庭に生まれました。幼少期から文学に親しみ、宇治山田中学校（現在の三重県立宇治山田高等学校）時代には回覧雑誌を制作するなど、文才を発揮していました。夏目漱石の『坊つちやん』を漫画化するなど、芸術的な才能も垣間見せていました。

1940年、日本大学専門部映画科に入学。映画監督の伊丹万作に才能を見出され、薫陶を受けました。1942年には、中学校時代の友人たちと『伊勢文学』を創刊し、詩作活動を本格化させます。

しかし、戦況の悪化により、1942年9月に大学を繰り上げ卒業し、入営。厳しい訓練を経て、落下傘部隊に配属されます。1945年4月9日、フィリピン・ルソン島で戦死（生死不明）しました。享年23歳。

作品

竹内浩三の詩は、入営中に書き残された日記や同人誌『伊勢文学』に掲載されたものが中心です。彼の詩は、戦場の過酷な現実と、故郷や家族への切ない想いを率直に表現しています。

代表作として知られる「骨のうたう」は、戦場の悲惨さを痛烈に描写した作品です。また、「望郷」は、故郷を恋い慕う気持ちを情感豊かに歌い上げています。これらの詩は、戦後になってから広く知られるようになり、多くの人々に感動を与えました。

没後の評価

竹内浩三の死後、姉の手によって遺稿集『愚の旗』が出版されました。その後、様々な作品集が出版され、彼の詩は世代を超えて読み継がれています。2004年には、稲泉連による評伝『ぼくもいくさに征くのだけれど　竹内浩三の詩と死』が、大宅壮一ノンフィクション賞を受賞し、再び注目を集めました。

2008年にはNHKでドキュメンタリー番組「ハイビジョン特集　シリーズ青春が終わった日　日本が見えない～戦時下の詩と夢・竹内浩三～」が放送され、彼の生涯と作品が広く紹介されました。

竹内浩三の作品は、本居宣長記念館に寄贈され、今も大切に保存されています。

主要作品リスト

『愚の旗―竹内浩三作品集』（1956年）
『竹内浩三全集』（1984年）
『骨のうたう』
『筑波日記』
『竹内浩三作品集』（1989年）
『竹内浩三全作品集―日本が見えない』（2001年）
『戦死やあわれ』（2003年）
『定本 竹内浩三全集　戦死やあはれ』（2012年）

まとめ

竹内浩三は、短い生涯を戦火の中で終えましたが、彼の残した詩は、今もなお私たちの心に深く響きます。彼の詩は、戦争の悲惨さと、人間の尊厳を訴えかける普遍的なメッセージを伝えています。彼の作品に触れることで、私たちは平和の尊さを改めて認識し、未来へと語り継いでいく必要があるでしょう。

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