竹本殿母太夫

竹本殿母太夫の系譜と業績

竹本殿母太夫（たけもと とのもだゆう）は、義太夫節における重要な太夫の一人であり、四代を数える名跡の持ち主です。この名跡は初代から受け継がれ、初代の竹本小定太夫から始まりました。江戸後期から影響を与え続け、特に初代の竹本殿母太夫はその美声と演技力で人気を博しました。四代続くこの家系は、唯一無二の芸術家たちによって支えられてきました。

初代竹本殿母太夫

初代竹本殿母太夫（1840年 - 1883年）は本名を斎藤太市といい、江戸生まれで、初めは竹本小定太夫として舞台に立ちました。彼は1851年に三代目竹本長門太夫に入門し、義太夫の技術を磨きましたが、一度は太夫を辞めて左官屋として生活し、後に再度舞台に復帰しました。彼は、竹本山城掾の門弟となり、1864年に初代竹本殿母太夫を名乗りました。

彼の初出座は、1864年に行われた『恋娘昔八丈』の一部で、特に「鈴ヶ森の段」の語りが評価されていました。この演目は美声の持ち主に好まれるもので、これ以後も数多くの演目を手掛け、秀れた実力を示しました。彼は名優として数々の作品に出演し、『酒屋』や『中将姫』なども得意としました。

二代目竹本殿母太夫

二代目竹本殿母太夫（1854年 - 1900年）は、初代の弟子であり、明治時代に活躍しました。本名を加藤房治郎とし、初めは竹本織の太夫として知られていました。入門の経緯は不明ですが、彼も継承された名跡の一つとして、次世代の芸術に貢献しました。彼は「明治の織太夫」と呼ばれ、義太夫の演技に新たな視点をもたらしました。特に茶屋場の役どころでの工夫や、技術的なパフォーマンスが高く評価されています。

三代目竹本殿母太夫

三代目竹本殿母太夫（1862年 - 1907年）もまた名門の一員として、義太夫の舞台に立っていました。彼は竹本小勢見太夫としてスタートし、継承された名跡を受け継ぎました。師匠である竹本勢見太夫からの影響も受けつつ、彼自身のスタイルを確立し、文楽座での活躍が顕著でした。彼の声の力強さや、演技での存在感は、当時の観客に多大な印象を与えました。

四代目竹本殿母太夫

四代目の竹本殿母太夫（生年不詳）は、三代目竹本織太夫の門下にて名を冠し、重要な役割を果たしました。入門後、順調にキャリアを積み重ね、竹本織栄太夫と名乗っていた過去もあり、舞台での経験を経て四代目竹本殿母太夫に襲名しました。

竹本殿母太夫の影響

竹本殿母太夫の名跡は、義太夫の世界においての重要な基盤を構成しています。特に、彼らの芸が持つスピリットは現代の義太夫演者たちにも息づいており、各世代の太夫に影響を与え続けています。また、彼らの芸は、継承されてきた技術と個々の表現力を兼ね備えており、その豊かさは今日も尚、多くのファンに支持されています。竹本殿母太夫の名は、義太夫の歴史に深く刻まれているのです。

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