竹蓋幸生

竹蓋 幸生（たけふた ゆきお）

竹蓋幸生（1935年5月20日生 - 2014年4月30日没）は、日本の高名な英語教育学者であり、千葉大学名誉教授です。彼の専門分野は多岐にわたり、英語教育学、英語音声学に加えて、システム工学や教育工学にも造詣が深く、これらの知見を融合させた研究で知られています。千葉県出身。

長年にわたり、日本の高等教育における英語教育の発展に尽力しました。特に、英語音声学や英語教育学、さらにはシステム工学といった異分野の知識を統合し、独自の教育理論や教材開発に取り組みました。また、大学や学術団体の運営、地域社会への貢献活動にも生涯を通じて積極的に関わりました。

彼の最も顕著な功績の一つは、独創的な英語教育理論である「三ラウンド・システム（3 Step System）」を構築したことです。この理論は、広範な学術分野からの知見を体系的に統合し、システム科学の手法を用いて完成された画期的な指導システムです。このシステムを基盤として開発されたCALL（Computer-assisted language learning）教材は、その高い学習効果と効率が多角的な評価によって実証され、日本の多くの高等教育機関で現在も利用され続けています。

学歴と職歴

竹蓋氏は、1958年に千葉大学教育学部を卒業後、中学校・高等学校の英語教諭を務めました。その後、フルブライト法による留学制度を利用して渡米し、オハイオ州立大学大学院で音声言語科学を専攻。1964年に修士号、1966年には博士号（Ph.D.）を取得しました。アメリカ滞在中には、オハイオ州立大学で助手や研究員、交換・客員助教授としても勤務しました。

帰国後、1968年に千葉大学教育学部の講師に就任し、助教授、教授を歴任。その間、大阪大学でも助教授・教授を併任しました。2001年に千葉大学を定年退官し、名誉教授の称号を授与された後は、文京女子大学（現・文京学院大学）で教授を務め、同学部の学部長や研究科長といった要職にも就きました。

主要な功績

教育および研究面では、約半世紀にわたる研究活動を通じて、英語音声学、英語教育学、システム科学といった分野で数多くの独創的な研究成果を発表し、国際的に認知された研究者となりました。特に、『日本人英語の科学』や『ヒアリングの行動科学』といった著作は、科学的な英語教育の基盤を築く上で重要な貢献を果たし、大学英語教育学会賞を受賞しています。

前述の「三ラウンド・システム」は、彼の長年の基礎研究が集約されたもので、英語の聴解力と語彙力の向上に顕著な効果を示すことが実証されました。この理論に基づき、彼の研究室の修了生らによって開発されたCALL教材を用いた指導実践は、大学英語教育学会実践賞を受賞するなど、高い評価を受けました。さらに、文部科学省の科学研究費補助金を得て開発されたCALL教材は、2001年度以降、全国の多くの教育機関で活用されています。一連の理論構築、検証、実践に至る研究活動は、「三ラウンド・システムの構築、その検証と教育実践」として外国語教育メディア学会学術賞を受賞しています。

教育行政面においても、千葉大学の大学院拡充に貢献したほか、教養部の改組に際しては、CALLを活用した外国語センターの設置を提案・実現させるなど、大学改革を推進しました。また、千葉大学教育学部附属中学校長を5年間務め、附属学校の運営・発展にも貢献。これらの功績により、2008年には文部科学大臣より地方教育行政功労者として表彰されました。

学会および社会活動では、日本音声学会や大学英語教育学会、外国語教育メディア学会などの要職を歴任し、学会の発展に寄与しました。また、千葉県内の各種協議会会長や千葉市教育委員会教育委員長を4期務めるなど、地域社会の教育振興にも尽力しました。さらに、文部省の英語教育指導者講座講師や情報教育関連の委員を務め、アメリカの学術誌の編集委員や大学での客員招聘、フルブライト制度の選考委員など、国際的な教育交流にも貢献しました。

その長年の功績が認められ、没後の2014年には正四位、瑞宝中綬章が追贈されました。

彼の残した業績、特に「三ラウンド・システム」とその応用であるCALL教材は、現代の英語教育における学習効果向上に大きな影響を与え続けています。多数の著作や監修教材、国内外での活動は、教育界に多大な貢献を残しました。

主な著作には、『日本人英語の科学』、『ヒアリングの行動科学』、『英語教育の科学』などの単著、CALL教材の監修として『Listenovate』シリーズや、文部科学省研究費補助金による多数の教材、アルクの「ヒアリングマラソン」シリーズの監修などがあります。

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