笑の大学

『笑の大学』

『笑の大学』（わらいのだいがく）は、三谷幸喜が手がけた日本の演劇作品で、ラジオドラマ、舞台、映画の三つの形態で楽しめる佳作です。それぞれのバージョンは共通のストーリーを持ちながら、役者や形式に応じて脚本が調整されています。

物語の背景

物語の舞台は1940年（昭和15年）の日本。国家が戦争へと動き出す中、国民の娯楽である演劇は厳しく規制されています。台本には警察による検閲が必要で、自由な表現が困難な時代背景が描かれています。この厳しい状況の中、登場するのは、心から笑ったことのない警視庁の検閲官、向坂睦男（さきさか むつお）と、喜劇を創作する劇団「笑の大学」の作家、椿一（つばき はじめ）です。

主要キャラクター

• - 向坂睦男: 検閲官として演劇の台本を精査する役割を担い、笑いが不謹慎だと考えている。
• - 椿一: 劇団の作家で、上演許可を得るために向坂と対峙します。

物語の展開

向坂は、椿が書いた台本に「笑い」を排除するような要求を次々と突きつけますが、椿は果敢にその要求に応えると同時に、逆に「笑い」を増やすアイデアを模索し続けます。このように、二人は台本の検閲と修正を繰り返し、次第に向坂自身もこの「台本直し」に夢中になっていきます。

しかし、物語の中で椿が口にするある一言により、向坂は自らの職責を見失い、国家権力としての立場を忘れてしまうことになります。これを受けて、向坂は椿に対して最大の難題を突きつけることになります。その一夜、椿に召集令状が届き、彼は「笑の大学」の幕が開かれないことを悟ります。彼は、一睡もせずに無心で最後の台本の書き直しに没頭するのです。

上演形式

『笑の大学』は、完全な二人芝居の形式で上演され、舞台は全て取調室に限定されています。この密室劇は、時間と場所の制約から生まれる緊張感やキャラクター間の掛け合いを際立たせる効果を生んでいます。1996年の初演以来、数回の再演を経て、2023年には新たなキャストでの公演が行われました。

メディアへの展開

この作品は、ラジオドラマ版としても制作され、1994年にNHK-FMで初演された時には高い評価を得ています。映画版は2004年に公開され、演技の幅を広げるために、舞台版とは異なるキャストや場面が追加されています。

海外での評判

『笑の大学』は日本国内に留まらず、ロシアやカナダ、イギリス、韓国などでも上演されています。英語版は『The Last Laugh』というタイトルで脚色され、国際的な観客にも演じられました。また、韓国版も日本版に近い内容で上演され、三谷自身も韓国を訪れてその公演に立ち会っています。

このように、『笑の大学』は時代や文化を超えて、多くの人々に笑いの大切さを再認識させる作品として、幅広い評価を受けているのです。

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