笑福亭呂竹

笑福亭 呂竹

上方落語の世界において、独自の軌跡をたどる噺家、笑福亭 呂竹（しょうふくてい ろちく）は、1977年の夏、7月1日に兵庫県尼崎市でこの世に生を受けました。本名を上村 和弘（うえむら かずひろ）といい、港湾都市としての歴史を持ち、活気あふれるこの街の風土の中で少年時代を過ごしました。彼のキャリアにおいて特に異彩を放つのは、落語とは直接的な関連が薄い分野での高等教育を修めたことです。

一般的な落語家の道のりとは異なり、彼は鳥取大学の工学部という、理系の学問分野に進学し、卒業しています。大学で培われたであろう論理的な思考力や分析的な視点は、古典落語の緻密な構成や、登場人物たちの心理描写を深く理解する上で、あるいは自身が演じる噺を構築していく過程で、意識するしないに関わらず、何らかの形で影響を与えているのかもしれません。異なる専門分野での学びを経て、話芸という全く異なる世界へと進むことを決めたその決断は、彼の探求心と多様な可能性を示唆しています。

大学での勉学を終えた後、彼は演芸の世界、特に上方落語への強い関心を持つようになります。そして、2002年4月1日という節目に、彼は上方落語界の重鎮である笑福亭呂鶴師匠の門を叩きました。師弟関係は、落語家にとって自身の芸を形成する上で極めて重要であり、笑福亭呂鶴師匠は、長年のキャリアに裏打ちされた円熟した芸と、多くの弟子を育ててきた実績を持つ人物です。呂竹は、師のもとで落語の基礎、すなわち発声、仕草、座布団の上での振る舞い、そして噺の組み立て方や登場人物の演じ分けなどを厳しく、かつ愛情深く指導されました。また、師匠の日常生活や人となりから、噺家として舞台に立つことの意義や、社会とどのように向き合うべきかといった、芸の根本にある人間的な深みを学び取っていったことでしょう。師事した日々が、彼の噺家としての礎を築き上げました。

現在は、上方落語協会の会員として、活発な活動を展開しています。上方落語協会は、関西地方における落語文化の灯を守り、次世代に継承していくための中心的な役割を担う団体です。呂竹は、協会の主催する定席や、様々な場所で行われる落語会に出演することで、自身の芸を披露し、観客との直接的な対話を通じて感性を磨いています。他の協会員との交流も通じて、自身の芸に対する新たな視点を得たり、上方落語全体の発展に貢献したりしています。舞台に立ち続けることは、噺家にとって自己研鑽の場であり、観客の反応こそが、何よりも大きな学びとなります。

高座で見せる顔とは別に、彼の情熱が注がれているもう一つの分野として、プロ野球があります。彼は、パシフィック・リーグに所属する千葉ロッテマリーンズの熱心なファンとして知られています。チームへの強い応援は、日々の厳しい稽古や舞台活動の合間におけるリフレッシュとなり、精神的な支えとなっていることでしょう。スポーツ観戦から得られる興奮や感動は、落語で描かれる人間ドラマにも通じる普遍的な感情であり、彼の芸に何らかの形で影響を与えているのかもしれません。野球ファンであるという親しみやすい一面は、噺家としての彼の人間的な魅力を一層際立たせています。

笑福亭呂竹氏は、尼崎という生まれ故郷、鳥取での学究生活、そして大阪での落語修行といった、多様な経験を経て現在の噺家像を確立しました。工学部卒という異色の経歴を持ちながら、上方落語の伝統に真摯に向き合い、師匠の指導のもとで芸を磨き、上方落語協会の会員として日々高座を務めています。また、千葉ロッテマリーンズへの熱い思いを胸に、多角的な魅力を放っています。これらの要素が複雑に絡み合い、彼ならではの個性豊かな芸が育まれています。今後の上方落語界における彼の更なる活躍に、多くの期待が寄せられています。

関連項目

落語家一覧
新撰落語もぎた亭

外部リンク

* 上方落語協会

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