笑福亭飛梅

笑福亭 飛梅 (しょうふくてい とびうめ)

上方落語協会に名を連ねる落語家、笑福亭飛梅（しょうふくてい とびうめ）は、1981年（昭和56年）3月5日に生を受けた。本名を橋本天童といい、大阪を拠点に活動する上方落語界の一員として、日々芸道を歩んでいる。

芸の道へ

飛梅が落語家としての第一歩を踏み出したのは、2008年（平成20年）12月1日のことである。この日、上方落語界で重きをなす笑福亭松枝に入門を許された。厳しいながらも温かい門下で、彼は落語の基礎から応用までを学び、噺家としての土台を築いていった。上方落語の豊かな伝統に触れながら、師匠や先輩方のもとで自身の芸を磨き続けている。

異色の半生

落語家になるまでの飛梅の道のりは、一般的なものとは一線を画す。高等学校（福知山商業高等学校）に入学したものの、わずか3ヶ月という短期間で中途退学という選択をしている。その後、彼が身を投じたのは、高所での作業を伴う危険で厳しい鳶職の世界であった。建設現場などで建物の骨組みを組み上げる鳶の仕事は、体力だけでなく、集中力とチームワークが不可欠である。飛梅はここで、汗を流しながら働くことの尊さや、職人同士の強い絆、社会の厳しさを肌で感じ取った。

この鳶職時代の経験は、飛梅の人間形成に深く関わっており、その後の落語にも大きな影響を与えている。特に彼がよく語るエピソードの一つに、鳶の先輩たちと夜な夜な繰り出したバイクツーリングの思い出がある。先輩たちは、若い飛梅にバイクの魅力だけでなく、アクセルの使い方一つにも込められた技や、安全運転の心構えなどを熱心に教え込んだという。単なる遊びではなく、そこには厳しさの中にも面倒見の良さがあり、人間的な触れ合いがあった。この異色の経験が、彼の感性を磨き、噺家としての幅を広げる貴重な財産となったのである。

体験を落語に昇華

鳶職時代の、特にバイクに関する鮮烈な体験は、飛梅自身の創作落語の重要な題材となっている。その代表作が『アクセル指南』と題された噺である。この落語では、当時の先輩たちとのユーモラスなやり取りや、バイクのアクセル操作を通じて学んだことが、彼の独特の視点と語り口で表現される。自身の人生のリアルな一コマを切り取って落語に仕立てることで、聴衆は飛梅という人間の深みや、彼が見てきた世界のユニークさに触れることができる。単なる滑稽話に終わらず、そこには彼の生き様や価値観が垣間見えるため、聴く者の心に強く響く。

上方落語の未来へ

笑福亭松枝門下として上方落語協会に所属する笑福亭飛梅は、大阪の寄席を中心に活動し、古典落語で鍛えた語りの技術と、自身の持つ異色の経験から生まれる新しい視点を融合させた落語を披露している。鳶職という厳しい世界で培われた度胸や、様々な人々と関わる中で得た洞察力は、彼の高座に独特のリアリティと深みを与えている。古典落語の継承者として、また自身の経験を活かした創作落語にも意欲的な噺家として、笑福亭飛梅は上方落語界において独自の存在感を放ちつつある。自身の引き出しの多さを武器に、今後のさらなる活躍が期待される一人である。

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