笠原貞造

笠原 貞造（かさはら ていぞう、1901年（明治34年）8月8日 - 1985年（昭和60年）3月19日）は、日本の昭和期において、弁護士、農民運動家、そして政治家として多角的に活動した人物である。群馬県に生まれた。

教育は早稲田大学で受け、1928年（昭和3年）に同大学専門部政経科を卒業した。大学卒業後のキャリアは行政分野から始まった。東京市牛込区役所に奉職し、書記として勤務した後、社会課および福利課において主任を務めるなど、実務経験を積んだ。1935年（昭和10年）に区役所を退職し、法曹界に転身、弁護士としての業務を開始した。

弁護士として活動する傍ら、社会運動や政治活動にも積極的に関与した。特に、戦前から戦後にかけての激動期において、農民の権利向上を目指す運動に深くコミットした。社会大衆党の新潟県連合会で執行委員を務めたほか、農民組合の組織において中心的な役割を果たした。具体的には、全国農民組合新潟県連合会の執行委員、さらには日本農民組合新潟県支部連合会の書記長といった要職を歴任し、困難な状況下にあった農民たちの生活や権利を守るための活動に尽力した。

広範な分野で公的な役職や団体の要職も歴任している。地域経済の安定を目指す新潟県地方通貨安定推進委員会の会長や、労使関係の調整を担う新潟県地方労働委員会の会長を務めるなど、地方行政や社会経済基盤の整備に貢献した。また、教育分野にも関心を持ち、新潟市教育委員や新潟県市町村教育委員連合会の会長を務め、地方教育の振興に貢献した。

法曹界内部においても指導的役割を果たした。新潟県弁護士会の会長を務めた後、日本弁護士連合会では理事、さらに副会長といった要職を歴任した。これらの役職を通じて、弁護士制度の発展や弁護士の職務倫理向上、会員の権利擁護など、法曹界全体の発展に寄与した。

政治家としては、戦後の新たな国会制度の下で衆議院議員となった。1947年（昭和22年）4月に実施された第23回衆議院議員総選挙において、日本社会党の公認候補として新潟県第1区から立候補し、見事当選を果たした。これにより、衆議院議員として1期の任期を務め、国政の場で活動した。しかし、その後に行われた第24回および第25回総選挙にも続けて立候補したが、いずれも議席を再び得ることは叶わなかった。

社会貢献に対する功績は広く認められ、栄典も授与されている。1959年（昭和34年）4月には、新潟県における社会事業共同募金に対して多額の寄付を行った。この功績が評価され、同年9月9日には紺綬褒章を受章した。

1985年（昭和60年）3月19日、83歳でその生涯を閉じた。死去に際し、長年にわたる社会への貢献、特に公職や団体役員としての功績に対して、日本政府より勲三等瑞宝章が追贈されるとともに、正五位に叙された。笠原貞造は、昭和期の日本において、弁護士、農民運動家、政治家として、多方面から社会の発展に寄与した人物として記憶されている。

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